で、外国好きな彼女の楽しみは、本に出てきた料理を、自分流でアレコレと再現してみること。
とはいえ、ウン十年も昔のことですので、ネットもないし、母の世代では外国の雑誌を読んで、というのも英語を読むのが難しいし、値段は高いし、ので、本場のレシピなんて手に入りません。
で、エイヤッとばかりに結構な自己流も多かったらしいですが、子供のわたくしにはわからないことですもんね。(けっこう素直に信じるタイプの娘だった、わたくし…)
「これが、アメリカのウエスタンに出てくる、男の料理の代表、ポークビーンズよ」と出されたモノは要はケチャップ味の煮豆!
もともと市販の煮豆は「甘すぎるし、衛生的にも疑問だし」とかならず自家製だったし、豆の和風おかずもしばしば食卓に登場していたのですが、地味な副菜。
そこの登場したポークビーンズはケチャップ味の上に、肉まで入ってる!
すぐに、お気に入りの定番おかずになりました。
本物のアメリカンな味とは違うかもしれないけれど、今でも時々食べたくなる おかずです。
同じように、白インゲン豆を使った我が家の定番の南西フランスの伝統的家庭料理「カスレ」もあって、こちらは鴨肉やソーセージも入り、ゆっくり煮込んだものを、さらにオーブンで焼く、本格派。
さて、みなさん忙しい毎日、おいしくヘルシーに豆を献立に取り入れようとしている方も多いと思います。
それには、缶詰の豆を利用するのが一番?
残念ながら、乾燥豆を自分でゆっくりと茹でたものと味が違う、というか豆の煮崩れを防いできれいな形をキープする為なのでしょうけれど、なんだか味が固い気がします。もう一度、ゆっくりと火を通して柔らかくすれば同じ、にならないのが不思議なんですが、わたくしの気に入った味にならないの。
豆料理のスタートはまず、乾燥豆をさっと洗ってたっぷりの水に浸けて一晩=6~8時間以上おいておく。これは、実際にかかる時間は2分くらいの工程ですからね。夏場だったら大きな密閉容器に豆と水を入れて冷蔵庫に入れれば、安心でしょう。
で、十分に浸水した豆を少し固めくらいに茹でます。
茹でた豆は冷凍保存すれば長持ちして、サラダに、スープに、甘く煮て副菜にと大活躍しますので、まとめて茹でてしまうことを「強く推奨」。そのためにも、少し固めに茹でておいたほうが良いかと。
茹で時間は豆により、つかう器具により、何分とかキチンと申し上げられないのです。真空保温鍋や、鍋ふとんみたいなのをかぶせて、いわば「保温」で茹でると時間は長めにかかるけれど、火を使ってない時間は外出も安心な上に豆が崩れることがありません。
仕上がりの味、というか香りが良いなと私が思うのは厚手の鋳物の鍋で弱火でコトコト。これは弱火とはいえ、完全に目を離すわけにはいかないので、煮ている間に掃除、アイロンかけ、手芸や読書など、時々鍋の様子を見ながら在宅していなければなりません。ま、その時間が楽しいのだけれどね
もう一つは、圧力鍋を使うことで、断然早く煮あがるけれど、自分の鍋と仲良くなって、ジャストな時間をつかむまでは煮えすぎて形が崩れちゃうこともあり、シューシューと蒸気の音で猫が落ち着かない!という思わぬデメリットも…。
豆と同じように、実際にキッチンで働く時間は少ないけれど、前もって準備しておくのが、豚肉です。
手早い自慢、の母はとんかつ用の豚肉とローマイヤーという店の(当時では高級な)ベーコンを合わせて使っていましたが、「ノア流」では、自家製の塩漬け豚肉を使います。
これまた「まとめて作って冷凍」できるので、たいてい800グラム位の豚バラ肉の塊を塩漬けします。
塩にスパイスを混ぜ込んで作ると、ちょっとした自家製パンチェッタみたいで美味しい、もし塩豚として和風や中華にも使いたい場合は塩だけで。
800グラムに対して美味しい(ここが肝心)塩大匙1、砂糖小さじ1強をまぶし、脱水シートに包みます。毎日脱水シートを取り換えて3日~4日で出来上がり。できれば、軽く重石をしておくと、肉質がしっかりして、さらに一味増します。
この豚肉がもし皮付きだと、煮込んだ時のゼラチン感がたまりませんが、無ければ無いで、良しとしましょう。
豆の下茹でと塩漬け豚肉さえ出来ていれば、あとは野菜と炒め煮にして、ケチャップとあればスパイス少々を加えるだけ、の簡単ボリュームおかずです。
昭和の少女(わたくし)はポークビーンズには白いご飯にキャベツのサラダ、が定番でした。
たまに、目玉焼きが添えてある時は嬉しかったけど、母の機嫌次第。
トーストにポークビーンズ、そしてチーズをのせて焼く、のも美味しい「残り物ランチ」になりますね。
本格イタリアンのトマトソースとは違う、ケチャップのこそ家庭の洋食の基本。オムライスもナポリタンもケチャップなしでは作れません。
そんなケチャップの懐かしい味ながら、豆も肉にもちょっと手をかけたポークビーンズは家庭ならではの「洋の味」なのです。
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