祖母と作ったホットケーキが料理の原体験
料理を初めて作ったのは、5、6歳のころ。祖母と一緒にホットケーキを作った思い出があります。私は親がおらず、祖父母に引き取られて育ったのですが、祖母は料理が苦手な人だったんですよ。オムライスといえば中身が白ご飯だったり、ハンバーグといえばレトルトのものだったり。
ホットケーキも、幼い私が食べたいといったから、慣れないのに作ってくれたんだと思います。普通はホットケーキを焼くときは油をあまり使わないけれど、祖母はそれを知らずに油をたっぷりひいて焼いて、できあがりも韓国のチヂミみたいな感じで。それでも一緒に楽しく作って、そこから料理に興味を持ち始めました。
子どものころの食事は、レトルトも多かったですね。でも学生のころから、自分で料理は手作りできるんだと思うようになって。試しにオムライスを作ってみたら、友達にも「美味しい」といわれて、だんだんと自分で料理をするようになりました。
アパレルから料理人、保育園での経験を経て料理家へ
結婚前は、都内でアパレルの店員をしていました。もともと人と話すことや、何かをすすめることが大好きだったんです。そして結婚後は、料理が好きだったこともあり、イタリアンレストランの厨房で働くことに。ピザ窯で本格的なピザを焼いたり、パスタ、アラカルト、デザートなどを担当していました。その後、レストランを退職し、保育園で離乳食や幼児食の調理も経験しました。
料理人のときは、お客様が料理を喜んでくれるのが仕事のやりがいでした。誰かが美味しいと感じてくれて、食事の場が盛り上がったり、嫌な事を少しでも忘れられたり。そのときに抱いた、誰かを喜ばせたいという気持ちが、今の料理家の仕事にもつながっています。
保育園で働いていたころは、食生活アドバイザーの資格を取得。その後、食品メーカーさんのレシピ開発の仕事をするようになり、何かの役に立てばと思い、調理師の資格も独学で取得しました。どちらの資格も、仕事と育児をしながら取得するのは大変なこともありましたが、現在もとても役に立っています。
祖母との別れを機に、大変な時期を乗り越えた
子どもは現在、小6と小5の2人姉妹。年子なので、子育てには苦労もありました。特に子どもが2、3歳くらいになり、仕事に復帰してからは、育児と仕事の両立が本当に大変で。唯一頼れる私の祖母も病気がちでなかなか頼れず、自分が体調を崩したときはとてもつらかったです…。
子どもたちは当時体がとても弱く、月に一度は必ずどちらかが熱を出したりで、ほとんど仕事に集中できませんでした。子どもも目を離せない時期ですし、精神的にも肉体的にも、あのころは相当疲れていたと思います。
そんな時期を乗り越えたきっかけは、大切な祖母が亡くなったことです。身も心も正直限界でしたが、祖母が亡くなってからは、祖母がしてくれたことを今度は自分が子どもたちに返す番だ、何かあったら祖母が空から見守っていてくれる、そう思うようになって…。
そして初めて夢中になれる「料理」というものを見つけて、天国の祖父母に向けてがんばっている姿を見せようと奮闘したことが、つらい時期を乗り越えられたきっかけになったんじゃないかと思っています。
Instagramが料理家としての第一歩に
SNSはもともと好きで、16歳ごろから携帯電話でホームページを作成したり、ひとりごとのようなブログを書いたりしていました。
結婚してからは忙しく、ブログをあげる頻度も減ったのですが、少し落ち着いてきたころ、ふとInstagramに子どものキャラ弁や夕飯などをあげるようになったんです。やがてそこからコロナ禍になり、Instagramに料理写真を投稿することが増えていきました。
投稿するにつれて、少しずつフォロワーさんが増えていって、「実際に作りました!」「家族に喜ばれました!」と料理をほめていただけるようになって。「ん? 何だろう、この喜びは…」と、今まで経験したことのないうれしさを覚えるようになりました。料理人としてお店で働いていてもなかなか聞けなかった、生の声を直接聞けることが何よりもうれしかったんです。
「ビビビッ!」ときたNadiaとの出会い
Nadiaに出会ったのは、Instagramで発信を始めたばかりのころ。ふとNadia Artistさんの写真に目が留まり、「なんてきれいな写真なんだろう!」と。ほかのレシピサイトでは見たことのないほどきれいな写真と、分かりやすいレシピの説明に圧倒されて、心のなかで「ビビビッ!」ときたんです。「私も料理研究家として活動したい」「いつか私もレシピ本を出したい」と思うようになったきっかけがNadiaでした。
そして何度もNadia Artistに応募して、ご連絡をいただいたのが編集長の黒澤さん。丁寧に一からレシピの発信について教えていただいて、もう感激しましたね。こんなにも優しく親身になっていただいた方はほかにいなくて、「絶対にNadia Artistになって一番人気になる! 恩返しをしたい」と思い、そこで私のなかのスイッチが一気に入った感じがしました。
料理家になるため勉強に没頭
とにかくNadia Artistになりたくて、こんなに夢中になれることは人生で初めてで。そこからはレシピ発信のための勉強に没頭しました。いろいろな方のレシピを見て研究したり、本をたくさん買ったり、図書館に行って調べたり、セミナーに通ったり…。
実際に全部材料の分量を測って、レシピとして作るという経験がほとんどなかったので、最初はかなり苦労しました。料理をする人は自分とまったく同じ調味料と同じ器具、同じ環境で作ることはできない。そのなかでどう伝えたらいいのか考えるのは奥が深く、いまも日々勉強中です。
そして昨年(2022年)、夢にまで見たNadia Artistになれて、その翌月にはなんと月間MVPをいただいて。「Nadia献立コンテスト」のグランプリやNadia新人賞もいただき、ついに夢だったレシピ本も出版! Nadiaの納会ではお料理を担当させていただき、昨年は人生で一番充実した1年だったかもしれません。
現状に満足できず、どんどん追求したくなる性格
現在の主な仕事は、メーカーさんの商品を使ってレシピ開発をさせていただくことです。メーカーさんから直接お喜びの声を聞いたり、それを使って実際に消費者の方々に作っていただいたりするのは、大きな仕事の魅力です。また、自分が載っている記事や写真、テレビを子どもたちに見せたときの、「ママすごい〜!」というとってもうれしそうな反応が何よりの励みになっていたりします。
大変だと思うのは、日々追求し、生み出し、時代にのって研究し続けること。性格的な問題ですが、自分のなかで満足するときが一度もなく…。おそらくこの先もないと感じています。いい意味でも悪い意味でも、現状に満足できず、「まだまだ」「もっと頑張らないと」と、どんどん追求したくなってしまうタイプなんです。
でも自分を責めすぎると精神的に落ち込んでしまうし、料理にも出てしまう。一度、Nadiaの黒澤編集長に相談したら、「料理を見ていると分かる」といわれて。楽しいときは料理も生き生きしているし、悩んでいるときは料理もどこかパッとしないんです。そこからは、悩んでも自分にとってマイナスにはならないように、気持ちを切り替えていこうと思うようになりました。
時短レシピや節約レシピを強化したい!
今後、Nadiaで増やしていきたいジャンルは、時短レシピと節約レシピです。料理人だったこともあり、つい手の込んだものを作ってしまいがちですが、ユーザーさんの役に立ちそうな、できるだけ簡単・時短なレシピを作っていこうと思います。
まだまだ物価高も続くので、引き続き節約レシピも強化していきたいです。また、コロナなどもあり海外に行ける機会もまだ少ないと思うので、多国籍料理なども覚えて、日本人の口に合うようなレシピも作っていけたらと思っています。デザートのレシピも、もっとこれから増やしていきたいですね。
撮影については、現在は基本的にiPhoneでしています。去年までは、レシピ本の表紙を含めて、すべてiPhone11で撮影していました。写真はすごく大事にしていて、どんなにいいレシピでも写りが悪いものは載せずに再度撮影したり、納得のいかないものは載せないようにしています。これからも写真の質にはこだわっていきたいですね。
ユーザーさんには感謝の気持ちでいっぱい
Nadia Artistとしては、「この人のレシピは間違いない」といわれるような存在になりたいです。そして、私がきっかけで料理を始めた方や、新しいArtistさんたちの憧れの存在になれるよう、胸を張って「Nadia Artistです!」といえるようになりたいですね。
ユーザーさんに対しては、もう感謝の気持ちしかありません。現在、Nadiaでのフォロワーさんは3900人ほど。コメントや作った料理の写真を投稿してくださる方も多く、返信は遅くなりますが、すべて返信するようにしています。「料理を作ってすごく喜ばれた」という言葉をいただくと、やはり自分のモチベーションになるし、感謝の返信を忘れないようにしています。ユーザーさんがいるから自分もいるし、今の自分を守ってくれるすごく大切な存在です。
今、こうして自分が一生懸命になれることを生まれて初めて見つけられたのはNadiaのおかげです。これからは今までよりもさらにレシピに磨きをかけ、多くの方を魅了するお料理を作っていけたらと思います。これからもよろしくお願いします!
写真:高橋 しのの 文:室井瞳子
まいのごはん。's profile
料理研究家、調理師、食生活アドバイザー。イタリアンレストランのシェフ、保育園での調理師の経験を経て、現在は食品メーカーや農家のレシピ開発・撮影なども手がける。年子姉妹を育児中のワーママでもあり、冷蔵庫にある身近な材料で作れる簡単で美味しいレシピを発信中。
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