料理がコミュニケーションのきっかけになる楽しさ
子どもの頃アメリカに住んでいたのですが、中学校の授業でHome economics(ホームエコノミックス・裁縫や料理実習の授業)というのがあって、そこの課題で「ライス・クリスピー・トリート」というアメリカのおやつレシピの調理実習がありました。
大量のマシュマロとバターを溶かしたものにお米のシリアルを混ぜて冷やし固める簡単なものなんですが、同級生から「今まで食べたことないんだ! これがアメリカの味だ! 最高だろ!」とか、「これを食べてないからお前は細いんだ! もっと食べろ!」などと言われて、「美味しいけど、こんなのばっかり食べてるから太るんだよ!」と返したりしてふざけあった記憶があります。
普段全然会話をしたことがなかった同級生と料理を通じて会話が生まれたり、同じものを一緒に共有する楽しさを体験したりして「料理って、なんか楽しいなー」と感じたことを今でも鮮明に覚えています。これが、料理に興味を持つきっかけになったかもしれません。
それから家のキッチンで母親の作る料理を横目で見たり、レシピ本や近所の料理上手な奥様からのアドバイスを参考にしてアップルパイやバナナブレッドを作ったりしていました。もともとパズルや工作など自分であれこれ工夫してもの作りをするのが好きだったので、その延長で料理をするようになりました。
中学生のときからいろいろ作っていたしアルバイトでも飲食店の調理担当だったので料理は得意な方だったと思うのですが、そこまで意欲があったわけではなかったんです。大学生のときに家で飲み会をやろう! というときに、僕の作った料理を食べて「すげーうまい! これ店出せるよ!」、「料理できるってカッコイイな! 尊敬するわ!」と喜んでくれたことがきっかけで、ぐっと料理が好きになりましたね。「自分が作ったもので人に喜んでもらえると楽しい!」「もっと美味しいものを作って、もっと喜んでもらいたい!」と思って、より料理に本気で取り組むようになりました。
料理を通して何を伝えたいか
僕が料理を作るときに意識しているのは「伝えたいことを明確にすること」と「料理にアクセントをつけること」の2点です。
まずは、食べる人に料理を通して何を伝えたいかが大切。旬の食材を楽しんでもらいたい、料理とお酒のマリアージュで新たな発見をしてもらいたい等、料理を作る上での目標を設定して、レシピを考えています。
その次に考えるのは食感のアクセント、香りのアクセント、刺激のアクセントなど。あまりにも全体の調和がとれすぎているとインパクトがないというか、面白みがないって思っちゃうんですよね。でも決して奇をてらうわけではなく、「ちゃんと美味しい」料理として完成されたものを追求しています。スタンダードなものや伝統的なものも大切ですが、新たな組み合わせだったり、発見だったりを料理でも体験してもらいたいと常に思っています。簡単ではありませんが(笑)。
料理は五感に訴えかける、エンターテインメント!
エンターテインメントって心を揺さぶられたり、刺激を受けたり、感動したりするものですよね。普段生活している中でなかなかエンターテイメントに触れることって少ないと思うのですが、料理ならそれが可能! 食べた時に「美味しい!」って感じると幸せな気持ちになるし、自然と笑顔になりますよね。しかもそれを共有する人がいたらさらに気分は上がりますよね。
味だけでなく、香りや音、盛り付け、五感全てに、フルに訴えかけることができる。料理ってまさに「エンターテインメント」です。作っている僕自身も料理をする時は常にワクワクした気持ちがこみ上げてくるし、そのワクワク感を食べる人にも体感してほしいと思って料理に取り組んでいます。
僕が最も得意かつ大好きなのは「お酒おつまみ」のレシピ。
お酒を美味しく飲むというのは、誰と、どこで、何を飲むか、ということも重要な要素ですが、一番は「何と合わせるか」ということだと思うんです。マリアージュやペアリングですね。このワインならラム肉のロースト、この日本酒なら金目鯛の煮つけ、みたいにお酒と料理のマッチングがぴったりくると相乗効果でどちらも格段に美味しくなるのがお酒と料理の楽しみ方のひとつだと思います。
最高な組み合わせに出逢ったときは本当に幸せな気持ちになるんですよね。それでついつい飲み過ぎてしまったり(笑)。そんな料理を作ることが最高の喜びです。
実は僕が公開しているレシピのほとんどは、スイーツや家庭料理でも何らかのお酒に合う料理になっています。何に合うかは記載していませんが、僕なりの裏テーマを設定しつつレシピ開発をしています。
あらゆる経験が料理にも活きる!
僕は舞台やCMを中心に俳優として、またマジシャンとしても活動しているんですが、オーディションでは作品のイメージに合った役者ということに加え、個性や特技といったものを求められる時が多々あります。それで、趣味の料理も俳優としての武器のひとつになるんじゃないかと思い、料理研究家としても活動を始めました。双方の経験が活かされる場として、例えば、料理教室を開催する時は俳優とマジシャンのスキルを導入したりもしています。料理の先生という「役」を俳優として演じ、生徒さんを「観客」としてとらえます。お客さんをコントロールするためにマジシャンが使うオーディエンス・マネージメントというスキルを使って対応することもあります。内緒ですよ!(笑)
レシピのアイデアは食べ歩きから得ることが多いです。300円台の牛丼から三ッ星のフレンチまで幅広くチェックしています。今流行りの食材や味付け、塩分濃度等が参考になるんです。
経験値や見識を広げるために地方や海外に行って、現地の料理のプロの方たちから教えてもらう機会を積極的に作っています。大人になってもまだまだ自分の知らない世界、手法、食材等がたくさんあります。料理という共通言語、美味しいというひと言。
それだけでお互いが理解し合える環境があるって幸せだなーと感じています。そういう「出遭い」の楽しさも料理家として伝えられたらいいなと思っています。
最近はまっているのは「韓国料理」です。去年初めて韓国に行って本場の味を食べて韓国料理ファンになりました。
料理関係の仕事で今年はすでに4回、月一で韓国へ行っています。実は辛い物が苦手なので大変なこともあるのですが、サムゲタンなどの辛くない韓国料理もたくさんあるので、今後は唐辛子以外のレシピや、韓国要素のある和食、フレンチ、イタリアン等も提案できたら面白いなと思っています。
また、Pinterestというネット上の画像をブックマークできるアプリがあるのですが、キーワードを入れると関連する国内外の画像が検索でき、登録している人のブックマークも見られるので重宝しています。どんなものが好まれているのかという傾向が分かったりもします。
そのほか、絵画、彫刻、前衛芸術、建築物、ファッション、花、動物、自然からヒントを得ることも。例えば、桜とウグイスが描かれた絵を見て、焼き鳥に桜の風味をまとわせたら合うかも…とか。なにかレシピに繋がるヒントになることを料理以外でも見つけられると面白いなーと思っています。そこから新たな組み合わせやレシピが生まれる可能性もありますしね。
こうやって日々触れるものが、自分の料理とどんどん組み合わされて行くのは本当に刺激的で、楽しい経験です。
Nadia Artistとして、料理をよりたくさんの人に届けたい
Nadia Artistになる際、審査やヒヤリングシートの提出がありました。そこで将来料理家としてどうなりたいか等、たくさん項目があって、改めて料理研究家として自分の目標や自己実現に対して必要なものは何かということを考えさせられました。記入した内容も少しずつ現実になっているのでありがたい限りです。
Nadia Artistとして活動してまだ1年ですが、テレビ番組でのフードコーディネーター、企業様のアンバサダーやレシピ開発、コラム執筆等ありがたいことにいろいろとお仕事を頂けて料理家としてスキルアップにつながりました。どんな仕事でも、「人から喜ばれる料理」を提案していきたいと思っています。
料理は、作って終わりではなく人が食べてくれて初めて完結するものだと思っています。レシピ開発やメディア媒体では作っても食べてもらえる対象がいませんが、そこで食べてもらう人を意識できるかどうかで料理の質が変わってくるのを感じています。基本中の基本ですが、常にそういった「食べてくれる人を意識した」レシピ・料理を提案できる料理研究家でありたいですね。
そういった料理の楽しさを伝えるためにも、Nadiaでレシピを投稿する際は「分かりやすさ」に気を付けています。調理手順など、作った本人は理解していても、それが読んでいる人に伝わらないとレシピとして成立しないこともあるので、紹介文や調理手順は誰が読んでも理解できることを意識して作成しています。
詳細やポイント等、伝えたいことが多いレシピに関しては文章量が多くなってしまうので、読みやすく書くことの難しさは日々感じます。また、料理写真は「作ってみたい!」と思ってもらうためにとても大切なので、美味しそうに見えるように撮ることを意識しています。
写真を撮るときも、レシピを考えるときと同様に「その料理で何を見せたいのか?」というところを意識しています。例えばステーキだったら肉を見せたい? スタイリングを見せたい? 肉を見せたいんだったらジューシーに見せたい、レアな感じを見せたい、焼き立てのシズル感を見せたい…といった感じにポイントを決めて撮影します。
お気に入りのキッチングッズを教えてください!
実はトングを10本以上は所持しているトングマニアです。一番のお気に入りは炒め物で大活躍! フライパンと相性がいいTAKAGIさんの「オートロック・シリコントング30cm」。片手で開け閉めができる優れもの。しかも先がシリコンなのでフライパンが傷つかないし柔らかいのでスパチュラのようにも使えます。長さも30㎝あるので炒め物をしていても手が熱くならない、ちょうどいい長さです!
もう一点おすすめなのがD&Sさんの「エンドグレイン・カッティングボード L」。こちらは「まな板&盛り付けもできるウッドボード」です。ステーキをこの上で切って付け合わせと一緒にそのまま盛り付けて食卓へ! ということができます。アカシアの木を使っていて厚みもあるのでしっかりとした作りです。何より見た目がカッコイイんですよね。僕はこの上にいつもまな板を置いています。身長がある方なのでキッチンの作業台が少し低いなという時は底上げ台にもなってくれます。滑り止めの足が付いているので安定感抜群です!
写真:高橋 しのの
三浦ユーク's profile
料理研究家・俳優・マジシャン・元寿司職人(アメリカ)。「世の中にもっと料理をする人が増えれば、大切な人とのコミュニケーションが増えるし、美味しいものを一緒に楽しむ時間を共有でき、世界は今以上に幸せになるんじゃないか?」という想いから、料理人口を増やすべく啓蒙活動として、おもてなし料理クリエイター集団「キッチン男子部」を設立、主宰。料理は表現であり、人に感動と幸せを提供できる「エンターテインメント」だという想いで活動しています。
三浦ユークさんのプロフィールはこちら
Nadia Artistになりたい方へ。申請ページはこちら