結婚して気付いた、料理の奥深さ
私が料理に目覚めたのは、結婚してから。母が実家で料理教室を開いていたのですが、自分で作るということには興味がなかったんです。音楽学校を卒業してアパレル業界に就職して…今の仕事に就くなんて、その頃は想像もしていなかったですね。
もともと、絵を描くことだったり、ファッションが好きだったので、料理を始めた頃は芸術作品のような感覚で作っていました。だから、結婚当初は見た目だけ立派で、あまり美味しくない料理を主人に食べさせていたと思います(笑)。それがいつの間にか、その先にある味の組み合わせを考える楽しさに気づいて、どんどん料理が好きになっていきました。
家族以外の人に料理を認めてもらえる喜びを知る
人を招いて料理をふるまったりしていたところ、友人たちから「料理を教えてほしい!」と言われるようになり料理教室を始めることになりました。子育てが大変だった時期ではありましたが、息抜きになるならと家族も温かい目で見守ってくれました。やると言ったらやる性格なので、反対しても無駄だと諦めていたのかもしれません(笑)。
ちょうどその頃、何気なく応募したWEBの料理コンテストで、なんと入賞! 家族以外の人に認めてもらえる喜びを知って、その後もさまざまなコンテストに応募してはちょこちょこ入賞するようになりました。あるテレビ番組に出演したことで、料理教室も一気に軌道にのり、お仕事として本格的に始動しました。
自然にたどり着いた、テーブルコーディネーターの道
料理に興味がない頃から、母からよく「料理とお花と食器は絶対に離せない」と聞かされていたのを今でも覚えています。そんな母の影響もあってか、料理をするようになると自然とテーブルコーディネートに興味を持つように。
テーブルコーディネートを展開した料理教室を始めた当初は独学でしたが、基本から学んでみたい! と思い立ち、テーブルコーディネートとフードアナリストの資格を立て続けに取得しました。それが、次男が0歳の時。今思うと、家族がよく理解してくれたなと本当に感謝しています。
料理教室を始めた時はまだ息子が小さかったこともあり、教室は「お子さま連れOK」いうかたちにこだわりました。子どもNGの教室が多いのですが、子どもがいてもキラキラ、かわいい場所に行きたい! と私自身が切に願っていたからです。子連れの生徒さんたちも多く、テーブルコーディネートを披露すると生徒から「ワーッ!」と歓声が上がり、私自身とっても楽しい時間でした。
テーブルコーディネートに必要なのは、相手を喜ばせようという想いだけ
「テーブルコーディネートはすばらしい食器がないとできない」「センスがないとできない」と思われることがあるのですが、それは少し違うかな? と思っています。テーブルに小さなお花を飾るだけでもテーブルコーディネートは完成なのです。まずは相手を思って盛り付け、料理に合いそうな食器を選択してみてください。そうするときっと「ここにお花があったら喜ぶかな?」「テーブルマットをこの色にしたらきれいかな?」とイメージが広がっていくと思います。
自宅でテーブルコーディネートしておもてなししたいときは、まずテーブルクロスを用意するのがおすすめです。日本はお膳の文化ということもあってクロスは少しハードルが高いのですが、印象がガラッと変わりますよ。あとはキチッと整列して並べること。人数分並べるだけで、食卓が整頓されて美しく変わります! そこに遊び心とサプライズを用意し、テーブルをキャンバスと考えて絵を描くようにコーディネートします。
「テーブルコーディネート」というと構えてしまいがちですが、食事が美味しく清潔にいただけるのなら、間違いという概念がない世界なので、自由にご自身の感覚で! まずはチャレンジしてください。
私が子供たちにできることは、心を込めた食卓を用意すること
長男がまだ小学校3~4年生くらいだった時は、なるべく夕方には仕事が終わるようにしていました。今では長男が中学2年生、次男が小学5年生なので、そろそろ親離れ、子離れの時期にきていますね。自分のことは自分でやるように任せているので、だいぶ仕事はしやすくなりました。まだ危なっかしいので、目をかけるようにはしていますが。
実は最近、中学校に進学した長男が発達障害ということが分かりました。とはいえ、普段の生活には支障がないのですが、学校という場では力が発揮できず、同年代の友人とは話が合わないようです。いろいろな意味で、今は親としては目が離せない状況です。 仕事が終わり、何かあったら学校に電話、訪問をしています。
仕事があるので、学校から連絡があってもすぐに駆け付けることができないところが心苦しいですね。ただ、お仕事をされているお母さまはみな同じ思いなのではないでしょうか? まだこれから乗り越えなければいけないところですが、私が子どもたちにできることは、美味しい料理と心を込めた食卓を用意すること。愛のある食卓が、家族みんなの笑顔のもとになると信じています。
テーブルコーディネートをもっと身近に感じてもらいたい!
Nadiaとの出会いは、料理番組で知り合った栁川かおりさんからのお誘いがきっかけです。「レシピがしっかりしていて、きれいな写真を求めているサイトがある」と聞き、登録することに。そのおかげで、いろいろなお仕事をする機会をいただきました。たくさんの料理家さんと出会うこともできて、本当に楽しく活動させてもらっています。
料理家、テーブルコーディネーターとして自分の居場所を見つけられて、Nadiaには本当に感謝しかありません。
今後は、テーブルコーディネーターと料理家、2つを兼ね備えたNadia Artistとしてユーザーさんに認めてもらうことが目標です。「テーブルコーディネート」という言葉にまだまだなじみがないので、もっとカジュアルに、もっと身近に感じてもらえるようにできたらと思っています。 相手のことを想って、料理やコーディネートをすることって本当に楽しくて、ワクワクするんです。そして、そのワクワクは連鎖する! と信じています。
お気に入りのキッチングッズを教えてください!
◎SUNCRAFT トング
仕事があるときは必ず持って行きます。トングの細さとしなり具合がとっても使いやすいんです! 大サイズ、小サイズがあって、細かい作業は小サイズででき、耐熱性なので揚げ物などは大サイズで作業できてお気に入りです。しかも大サイズ約600円、小サイズ約300円(ともに購入当時価格)と超リーズナブル! 料理教室をやっていたときは、生徒さんがこぞって購入していました。お料理好きさんにはプレゼントしても喜ばれますよ。
写真:高橋 しのの
松尾絢子(ちきむん)'s profile
NadiaのArtistにスポットを当て、ここでしか聞けない裏話や料理研究家さんの想いをお送りする「Artist History」。今回は、中学2年生と小学5年生の2人の男児の母でもあり、料理家、テーブルコーディネーターとして活躍している松尾絢子さんをご紹介します。いつもすてきな料理とテーブルコーディネートを提案してくれる松尾さんに、ここまでの道のりや、料理家としての想いをお聞きしました!
松尾絢子(ちきむん)さんのプロフィールはこちら
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