調理学校時代に基礎をたたき込まれた懐かしのだし巻き卵。今回は、料理人として学んだ美味しさの秘訣に加えて、フードスタイリストとして身につけた綺麗に仕上げるためのコツも伝授します。
◆ 今回は白だしと水を1:5の割合で稀釈していますが、白だしの味はメーカーによっても異なりますので、稀釈加減は味をみて調整してください。 ◆ 基本の卵とだし(白だしと水を混ぜ合わせた調味液)の比率は、卵1個に対して、だしが大さじ1と覚えておくと便利です。だしの割合が多くなるほど柔らかくジューシーに仕上がりますが、その分破れやすくて巻きづらくなります。ちょっと巻くのが苦手だな・・・という方は、この比率から少しだしの量を減らしていただくと扱いやすくなります。 ◆ 巻くのが苦手でいつも卵を破いてしまう・・・という方は、だしに片栗粉を加えておくとよいです。加熱によってでんぷんが糊化し、つなぎの役割を果たしてくれるので、破れにくくなります。だし巻き卵を何重にも巻いて太くしたい場合にもおすすめの方法です。だし巻き卵は太くなっていくと重みがでてきて、返すときに勢いよく動いたりして破れやすくなってしまいますが、片栗粉が破れるのを防いでくれます。 ◆ 今回は幅15cm、長さ18cm(持ち手部分は含まず)の卵焼き器を使用しています。 ◆ だし巻き卵は、低温でゆっくり焼くと見た目はつるんと綺麗に仕上がりますが、時間をかけて焼いている間にだしが蒸発してしまうのでジューシー感は失われてしまいます。本来は、高温で短時間で焼くことが望ましく、温度が下がりやすいアルミ製よりも蓄熱性のいい鉄製の卵焼き器がおすすめです(卵を入れると一気に火が入り、ふわっふわのジューシーなだし巻き卵に仕上がります)。その代わり、もたもたしていると焦げてしまうので、手早く巻く必要があります。また、鉄製のものはくっつきやすいので、油ならしなど少し手間もかかります。手軽さをとるか、美味しさをとるか、ご自分のスキルや環境に合わせて選んでいただけるとよいと思います。
A 白だし大さじ1/2、水大さじ2と1/2、片栗粉小さじ1/2を混ぜ合わせる。
卵をボウルに入れ、よく溶きほぐす。卵白の塊は箸で持ち上げるようにしてコシを切る。箸になにも引っかからなくなるくらいまでコシが切れればよい。
A 白だし大さじ1/2、水大さじ2と1/2、片栗粉小さじ1/2を加えて混ぜる。だし巻き卵をより滑らかに綺麗に仕上げたい場合にはザルで漉す。
卵焼き器を弱めの中火にかけ、油に浸したペーパータオルでまんべんなく油を塗る。四辺の角や側面にもしっかりと塗ること。
箸先を卵液につけて卵焼き器に線を描いて温度を確認する。焦げることなく一瞬おいてすぐに固まる状態であれば適温。描いた瞬間に固まる場合には温度が高く、完全に固まるまでに1秒以上かかる場合には温度が低い。温度が高い場合には、卵焼き器の底をよく濡らした布巾の上に置いて温度を下げる。
卵焼き器が適温であることを確認したら、お玉1杯分の卵液を注ぎ入れ、すぐに卵焼き器を回して全体に広げる(片栗粉を入れている場合には卵液を都度よく混ぜてから使うこと)。気泡ができた場合は箸先で潰して平らにする(大きく穴が空いた場合には卵焼き器を傾けて空いた穴に卵液を流し込み、穴を埋める)。
卵液の流動性がなくなり、半熟の状態になったら、卵焼き器を持ち上げて手前に傾けて火から外し、卵を奥から巻く。最初になるべく隙間ができないようにしっかりと芯をつくると、綺麗に巻きやすい。
卵焼き器の奥側の空いたスペースを火にかけて温め、油を塗る。 ※卵焼き器はコンロの真上ではなく、少し手前にずらしてある状態
巻いた卵を奥にずらし、手前の空いたスペースを火にかけて温め、油を塗る。 ※卵焼き器はコンロの真上ではなく、少し奥にずらしてある状態
④と同様に温度を確認し、お玉1杯分の卵液を注ぎ入れて広げる。このときに、巻いた卵を軽く持ち上げて下に卵液が広がるようにする。
卵液が半熟状になったら奥から手前に巻く。巻いた卵を箸で挟んで持ち上げようとすると破れやすいので、巻いた卵の奥側を箸で支えながら卵焼き器をリズム良く手前に起こすようにふることで、勢いと傾斜を利用して巻く。
⑦から⑩の手順をくり返し、卵液がなくなるまで巻く。
まな板に取り出し、温かくて柔らかいうちに巻きす(なければペーパータオル)で上から押さえて形を整える。巻きすを使用することで、平行が保たれて均等な厚みになり、表面の丸みも整えやすく、湯気を逃がすこともできる。
粗熱がとれて形が落ち着いたら、食べやすい厚みに切り分ける。お好みで青紫蘇、大根おろし、醤油などを添えてもよい。
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早坂玲奈
大切な記念日や、ご友人を招いてのお食事会など、料理を少し頑張ってみたいときに「何を作ったらいいかな・・・?」と迷ったら、ぜひ私のレシピルームをのぞいてみてください。『大切な人を喜ばせたい』という気持ちを応援するためのおもてなし料理をご紹介しています。 出張料理人・飲食コンサルタント・料理教室講師・フードスタイリストとしての経験を積みながら、プロ向けからご家庭向けまで、様々なレシピ開発に携わってきました。美味しさで周りを喜ばせることは、作り手自身の幸せにも繋がることだと日々感じながらこの仕事を続けています。 「簡単」「時短」も素晴らしいけれど、ときには時間をかけて料理を頑張ってみたい日もあると思います。料理にかける手間は、正しく作れば必ず報われます。丁寧に作り方をお伝えすることで、みなさんが大切な日を笑顔で過ごすためのささやかなお手伝いができれば嬉しいです。