長年愛され続けているお店の味や料理の楽しさを伝えたい
私が料理家になったきっかけは2011年3月11日に発生した東日本大震災です。ちょうど私が大学を卒業し、社会人になるという時期に震災が起こりました。被災した方の力になりたいという気持ちが強く、その年に何度かお休みをとって被災地へボランティアに伺いました。そのときに、現地の同年代の方と話す機会があり、前向きに頑張ろうという気持ちややりたいことがあっても環境面でできないというもどかしさを聞いて、「自分は東京でぬくぬく働いていてそれでいいのか」と。
その帰りの新幹線で、自分がやりたいことはなんなのか、自分らしく生きていくにはどうしたらいいのかをじっくり考えたんですね。
私の親は飲食店一本で私を含めた4兄弟を育ててくれたわけですが、それは30年近くお客様に愛された味があるからこそのことなので、その味を残したいという思いがまず浮かびました。さらに、お店だけでなくより多くの方に料理の楽しさを伝えていければ、と。
そのふたつを仕事にするためにたどり着いたのが「料理家・フードコーディネーター」という職業。まずは料理家の一歩となる、フードコーディネーター養成スクールに通いはじめました。結局、勤めていた会社を約1年で退職することになりましたが、覚悟を決めた行動だったので、もちろん悔いはないですし、逆にあのときでないとできなかっただろうなと思います。
自分の強みを生かして仕事につなげる
今は、食品メーカーのレシピ開発・商品開発をメインに、レシピ本・雑誌の撮影、各メディアへの出演、飲食店コンサルティングなど食にまつわる仕事をさせていただいています。
人前でしゃべることも好きなので、デモンストレーションなどのお仕事も多いです。あ、あとはお酒も大好きなので、日本酒やワイン、ビールのお仕事なんかも(笑)。将来役に立つのではと思って取得していたソムリエやきき酒師などの資格も、独立して約5年経った今では自分の大切な武器になっているのではないかなと思っています。
それから、これは特に自分の強みと言えるのではないかと思うのですが、食とスポーツを絡めたお仕事が多いです。
私自身がもともと趣味でやっていたトライアスロンに結構のめりこんでいまして。昨年のシーズンを通じて年間ポイントランキングで上位になったおかげで、エイジグループ(いわゆる一般・アマチュア)の部で世界選手権出場の権利を獲得できたんです。今年の9月にオーストラリアで行われる世界選手権にエイジグループ日本代表として出場します。
自分で作った食事でパフォーマンスを高め、結果を出すというメソッドを確立しているので、これもひとつの強みだと思います。最近ではスポーツをする人のための食事なども提案しています。
「正しい」より「わかりやすい」説明で料理の楽しさを伝えたい
仕事をする上でのモットーは、「料理をもっと楽しく身近に」ということです。これは、独立したときから変わっていません。
料理教室では料理が楽しいと思えるような仕掛けや教え方を工夫していますし、楽しんでもらった結果、料理を身近に感じてもらえるようになればいいなといつも考えています。
もうひとつあげるとすれば、「正しい説明」はもちろん、「わかりやすい説明」を心がけています。正しい説明は機械でもできますが、その方の料理スキル、家族構成、仕事環境などを考慮してお伝えしないとまったく伝わらないこともあります。教科書通りの正しい説明はベースとしては大切ですが、相手に合わせた、「その人にとってわかりやすい説明」をいつも心がけていますね。
強みはこだわりいっぱいの動画コンテンツ
さらに、私は動画コンテンツを持っているという点も強みと言えると思います。もともと大学生の頃から趣味で動画を作っていたこともあり、いまは動画付きのレシピをアップすることも多いです。
高橋善郎さんの動画レシピはこちら
動画自体はいまではスマホでも簡単に撮れますし、YouTube上でもたくさんの料理動画が存在していますが、画質や音声に関しては品質がまばらなものも多いのが現状です。なので、自分で作るものはきちんとしたカメラ、マイクやインターフェイスを使って仕上げています。
それが評価されて支持してくださる方が増えてきているのを感じるので、この動画コンテンツをもう少し成長させたいと思っています。撮影から編集まで1本仕上げるのに10時間くらいはかかっていますので、是非見てくださいね!
初のレシピ本出版!何より想い出深い一冊に。
独立してから約8ヶ月後に出版した「魔法のココナッツオイルレシピ(出版:宝島社)」という本は、非常に印象深いお仕事のひとつです。
独立してから自分の作品を出版社へ送ったり電話をかけたりして営業していましたが、そのときはまだ実績が何もなかったので、なかなか会ってもらえなくて。それでも会う方会う方にワードで作った資料をお渡しして、何かあればぜひ…!という期間が長く続きました。
そういうやりとりの中で、ある出版社の方がココナッツオイルがまだ日本で流行る前にいち早く本を出したいとおっしゃったのをきっかけに、その夜にレシピ案をまとめて送ったんです。それを見て、数週間後に「ココナッツオイルの本を高橋さんにお願いしたい」というお電話をいただき、思わず「ヨッシャー!」とこぶしを突き上げるくらいの喜びだったのを覚えています(笑)。
レシピ本なんて初めてですし、レシピ考案から買い物、そして当日の撮影と本ができあがるまでは本当に大変でした。でもそんな過程を経てできたこの本は、何より想い出深い一冊になりました。
リフレッシュトレーニングで仕事のモチベーションを上げる
私は、仕事をする上で大変と思うことは意外とないんです(笑)。フリーランスなので、朝の満員電車に乗らなければいけないわけでもないし、組織にいると起きるような対人関係のストレスを感じることもありません。しかし、働かないとお金が全く入ってこないので自分のモチベーションを維持し続けるというところは気をつけています。
私の場合、そのために大切なのは「汗をかくこと(トレーニング)」と「食べること」。納期に追われているときや煮詰まったときはジムで軽く泳いだり、ジョギングしたりして汗をかくと脳がリフレッシュしてその後はものすごくはかどります。疲れているときこそリフレッシュトレーニングです。
もうひとつ、「食べること」ですが、これはプチ外食がおすすめです。仕事柄、自分で作ったものを食べることも多いですが、近くの居酒屋に行ってお酒を軽く飲んでおいしい料理を食べると、とても良い気分転換になります。
目標に向かってまだまだ挑戦し続けたい!
料理家に限らず、フリーランスになる上で必要なことですが、自分を研鑽することはすごく大切だと思います。知識だけ先行して技術が伴っていないとそれはいつか見透かされてしまいますし、逆もしかり。知識も技術も、そして人柄も常に少しずつで良いので、成長できるように続けていくことが欠かせないですし、私も意識しています。あとは、さきほどお話したモチベーションを維持することが大切です。
今年でちょうど30歳になり、30代は20代よりもっと面白いこと、ワクワクすることにたくさんチャレンジしていきたいと思っています。常に最新の知識を身につけて料理家としての技術を向上させていきたいですね。得意分野の和食だけでなく、フレンチやイタリアン、スイーツまでも、もっと強化していきます。
また、動画をからめたプロモーションで海外の方々とつながったり、経営する店舗を海外に進出させたり、全く異なるジャンルの方々とコラボレーションした事業を立ち上げたりと、色々なことにチャレンジしたいです。
そして、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにも食ジャンルで関わるという目標もまだあるので、そこに向けてももう一段階ギアをあげて進んでいきたいと思っています。やりたいことはたくさんあるのですが、とにかく目の前の仕事や相手に誠実に対応して、最善を尽くす。そうすることでこれらの目標を形にして、関わった方々、応援してくださっている方々に恩返ししていければと思います。
お気に入りのキッチングッズを教えてください!
写真左は、ASTRUCT(アストラクト)の男性専用腰巻きエプロン。すべて手作りかつ日本製で、デザインが洗練されているのでオススメです。色味のバリエーションも豊富。 その上にあるのが盛箸です。和食店ではおなじみの少し重みのあるものですが、ある程度重みと長さがあることで盛り付けやすさもアップします。衛生面でも◎。 その右隣がガスバーナー。料理に焼き目をつけ香ばしく仕上げます。お店ではもちろん、撮影シーンでも焼き色を微調整するために大活躍。東急ハンズなどで購入可能です。 写真右側のゴールドにコーティングされたフライパンは、マイヤージャパンのもの。こびりつきにくいなどの特徴はもちろん、色味がキレイなので、動画撮影のときには欠かせないアイテム。
写真:高橋 しのの
高橋 善郎's profile
料理家、トライアスリート、利き酒師、ジュニア野菜ソムリエ他資格保有。 和食をベースに、エスニックからイタリアンまで幅広いジャンルのレシピが人気を集めている。スポーツをこよなく愛し、トライアスロンではエイジグループの日本代表。2018年夏、オーストラリアで行われる世界選手権に出場。企業のレシピ開発、本の出版、メディア出演多数。
高橋 善郎さんのプロフィールはこちら
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