お菓子作りがきっかけで料理が好きに
物心ついたころから、母と一緒にお菓子や料理を作るのが好きでした。まずお菓子作りが好きになって、小学生のころはケーキ屋さんで売っているようなふわふわのスポンジケーキを焼けるようになりたくて、何度もケーキを焼いていました。卵の泡立て方や混ぜ方などのちょっとした違いで、できあがりがまったく違ってくるのが楽しいやら悔しいやらで。「次はもっと美味しく作りたい!」と、どんどんハマっていきました。
幼稚園の年長のころには子ども用の包丁を買ってもらい、それを使って料理をするのが楽しかったのを覚えています。ハンバーグの生地をこねたり、餃子を包んだりと、いろいろなお手伝いをしていました。料理もお菓子と同じように、何度も挑戦していくうちにどんどん好きになっていきました。
フードコーディネーターの仕事を知り一念発起!
フードコーディネーターの仕事を知ったきっかけは、料理研究家のSHIORIさんのブログに出会ったことです。「食に対して、こんな関わり方のできる仕事があるんだ!」と知り、一念発起して、レコールバンタン(調理専門学校)に入学。フードコーディネータークラスに通って、調理の基礎などを勉強しました。
卒業後はイタリアンレストランに就職し、キッチンやホールを担当。その後、フードコーディネーター事務所に転職して、商業用のフード撮影、レシピ開発などに携わってきました。そして、FCAJフードコーディネーター検定2級、だしソムリエ、発酵食エキスパート、食品衛生責任者などの資格も取りました。事務所を退職後は、料理教室の講師などをしながら、フリーランスでレシピ開発や撮影、コラム執筆などのお仕事をしています。
悩んでいたときにNadiaと出会った
実はNadiaを知ったのは、「私には料理の世界は向いてないのでは…」と悩んでいた時期でした。憧れていたフードコーディネーター事務所で働いていましたが、「私には才能がないかも」と思い、一度食の世界を離れているんです。
そのころ趣味でレシピサイトに料理をアップしてみようかなと思って、サイトを探していたときに、たまたまNadiaを発見して。「写真がきれいなレシピサイト」というところに惹かれて、Nadia Artistに応募しました。当時は合格率がこんなにも低いなんて知らず、軽い気持ちで応募したので、あとで合格率などを聞いたときはとても驚きました。
今、こうしてまた大好きな料理を仕事にできているのはNadiaに出会えたからだと思っています。Nadiaにレシピをアップしはじめたころは、個人としては私には何も実績がありませんでしたが、そんな私にも食品メーカーのレシピ開発やコラム執筆のチャンスをいただけてとても感謝しています。
コラムのお仕事を始めた当初は、文章を書くことやレシピ考案も「これで大丈夫かな?」と不安になりながらでしたが、Nadiaの担当の方はいつも丁寧に相談にのってくださり、そのメールにいつも励まされていました。本当にいつもありがとうございます!
大好きな料理を仕事にできて幸せ
大好きな料理を仕事にできていることは、それだけでもとても幸せなことです。たくさんの方に私のレシピを見ていただけるのがとてもうれしいですし、Nadiaユーザーさんから「美味しくできました」とコメントをいただけることも、とても励みになっています。
企業のレシピ考案のお仕事では、いろいろと制限があるなかでレシピを考えないといけないことも多いので、なかなかいいアイデアが出てこないときは少し大変だなと思うことも。でも、商品を活かした美味しいレシピを作れたときにはとても喜びを感じます。
料理は基本を大事に、シンプルに
料理のこだわりは、旬の食材を多く使い、添加物などがあまり含まれていないシンプルな調味料を使うことです。料理は「見た目の美味しさ」も大事だと思っているので、彩りよく仕上げることも意識しています。また、手間は省きつつも、下ごしらえや調理方法など、料理の基本は大切にするようにしていますね。
クライアントの商品を使用したレシピを考えるとき、一番大切にしているのは、商品の特徴を活かして美味しく食べられること。それから、季節感や旬の食材、シーンなども考慮するようにしています。食器や小物も、朝ご飯か? 夕ご飯か? 季節は? 誰と食べる? といったことをイメージして選んでいますね。ただし、あくまで料理が主役。スタイリングや撮影では、料理にまず目がいくよう、食器や小物が目立ちすぎないよう心がけています。
レシピが雑誌に載って喜びを実感
Nadiaで印象に残っているお仕事は、雑誌へのレシピ掲載です。Nadiaを経由して依頼をいただいたのですが、『関西のおいしいパン2021』(ぴあMOOK関西)に、食パンを使ったアレンジレシピを8品掲載いただきました。雑誌が本屋さんに並んでいるのを見たときはとてもうれしかったですし、家族や友人も喜んでくれたのがさらにうれしかったです!
企業とのお仕事では、オールドエルパソさんのメキシコ食材を使ったレシピや、神戸屋さんのパンのアレンジレシピなどを担当させていただいています。ありがたいことに何度かお仕事をさせていただいているのですが、一度使った食材の組み合わせはできないのが難しいところ。いつも何か目新しい組み合わせがないかと、考えをめぐらせています。
「料理の基本」を分かりやすく伝えたい
Nadiaでレシピを紹介するときには、食材をどう切るか? どのくらいまで炒めるか? などをできるだけ分かりやすく書き、再現性があるレシピを心がけています。お菓子のレシピは長くなりがちなので、抜けている部分があるのではないかと何度も読み返したりします。また撮影では、作りたての一番美味しい瞬間を切り取れるように、シズル感のある写真を心がけています。
今後は、「料理の基本」をしっかりと伝えられるレシピを作っていきたいですね。以前、料理教室で講師をしていたときに、生徒さんから「レシピに書いてある『だし』って何のことですか?」「『だし』が出てくるレシピは、よく分からないから作らない」といった声を聞くことがあって、だしをとって料理するのは当たり前なことではないのだなと少しショックを受けました。
慣れるまでは少し手間はかかるかもしれませんが、きちんと引いただしで作ったお味噌汁や煮物は、やはり美味しいものだと思います。だしだけに関わらず、きちんと下処理をしたり、少し手間をかけたりするだけでもグッと美味しくなると思っているので、料理の基本を大切に、初心者の方にも分かりやすいレシピを作っていけたらいいなと思います。
長く作り続けてもらえるレシピを発信したい
将来的には、「誰かの家庭の味」になれるようなレシピを作れる料理家になりたいと思っています。私には、14年前からずっと同じレシピで作っている料理があって。その料理は、2008年の雑誌『きょうの料理』(NHK出版)に掲載されていた、清水 信子先生の「数の子の甘酒づけ」。当時、数の子の醤油漬けがあまり好きではなかったのですが、このレシピを見つけて作ってみるととても美味しくて感激したんです。それ以来、おせち料理の数の子はずっとこのレシピで作っています。
私もそんなふうに、ずっと誰かの「家庭の味」として、長く作り続けていただけるようなレシピが作れるといいなと思っています。
写真:高橋 しのの 文:室井瞳子
松井さゆり's profile
フードコーディネーター、料理家。大阪出身。料理の基本を大切に、旬の野菜をたっぷり使った料理や、簡単に作れるスイーツのレシピなどを発信中。
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