祖父母の家で料理をした楽しい思い出
料理に興味を持ち始めたのは小学生のころです。子どものころから料理が出てくる本を読むのが大好きで、特に児童書の「わかったさん」「こまったさん」シリーズは、毎週必ず図書館で借りて読んでいました。初めて作った料理も『わかったさんのクッキー』に載っていたレシピだったんですが、両親や妹が喜んでくれて、すごくうれしかったのを覚えています。
祖父母の家に遊びに行くことも多くて、その中で料理を教わったり、包丁や台所を好きに使わせてもらったりしたことも、影響が大きいですね。祖父母の家には畑があり、収穫するところから始まり、その野菜やフルーツを使って料理を作るところまで、楽しみながら教わりました。
収穫したラズベリーでジャムを作ったり、野菜で煮込み料理を作ったり。和食だけでなく、海外の料理も祖母と一緒に作った楽しい思い出があります。
コロナ禍がきっかけでInstagramを開設
ちゃんと料理をするようになったのは大学生のころです。ひとり暮らしを始めたので、週2、3回は自炊をするようになりました。大学卒業後は航空会社に勤務し、CAとして働きました。その後、結婚を機に事務のお仕事に転職し、2020年ごろからInstagramで料理の投稿を始めたんです。
Instagramの投稿を始めたのは、コロナ禍がきっかけでした。コロナの影響で、子どもたちがまるまる2か月間自宅で過ごすことになり、一番の気がかりがご飯作りだったんです。そんな中、料理のモチベーションを上げるために、記録用としてInstagramを開設しました。なかなか人と会う機会がなかったので、日々のちょっとした気持ちを書く場所が欲しかったのも理由のひとつです。
最初は献立の写真を投稿するだけでしたが、しだいにフォロワーの方にレシピを聞かれるようになって、レシピの投稿も始めました。当時同じような状況の方が多かったのか、Instagramを通じて仲良くなれた方もいて、どんどん楽しくなっていって今に至ります。
祖母の遺品から「レシピを受け継ぐこと」の素晴らしさを発見
昔からレシピ本を見るのが好きだったこともあって、「いつかはレシピ本を出版したいな」と漠然と思っていました。その思いが明確になったきっかけは、一昨年に祖母が亡くなったことです。
祖母の作る料理はいつもびっくりするほど美味しくて、親戚みんなが大好きな、思い出のお菓子があったんです。そのお菓子はビスコッティだったんですが、祖母が亡くなり、遺品を整理しているときに、祖母が書き置きしていたレシピのメモを見つけて。家に帰って作ってみたら、祖母の味がそのまま再現されていて、もう言葉にならないくらいうれしかったんですよね。
祖母が作ったものと同じ味がまた食べられることにも感動したし、その味をこの先も受け継いでいけるというのもうれしくて。私の子どもがひとり暮らしを始めたときや、親元を離れるタイミングがあれば、受け継ぎたいレシピをいつでも渡せるようにしたいなと思いました。
また、祖母は戦争で両親を亡くした中、料理をすべてレシピ本で学んだということを知って、「生活を支えてくれるレシピ本ってすごいな」と、ますます書籍を出したいという思いが強くなっていきました。そんなある日、書店に並ぶレシピ本に「Nadia」という文字を見つけて、「もしNadia Artistになれたら、目標に近づけるんじゃないかな?」と、ピンと来たんです。
その後、Nadia ArtistになってすぐにNadiaの葛城社長とお話する機会があって、「一番の目標は?」と聞かれたときは、「本を出版すること」と答えました。それから、どのくらいの条件なら出版させていただけるのか伺ったところ、「Instagramのフォロワーが10万以上が目安」というアドバイスをいただき、モチベーションも高まっていったんです。
写真の質が向上し、フォロワー数もアップ
Instagramを始めて最初の1年は、フォロワーも2万人ぐらいでした。フォロワー数が伸びたきっかけは、Nadiaの写真講座を受けたことですね。もともとは料理写真も室内の照明で撮影していましたが、講習で教えていただいたとおりに、自然光を活かして撮影する方向も工夫したところ、ぐんとフォロワー数が伸びてきたんです。本当に写真の影響は大きいんだなと実感しました。今では、昔の写真はちょっと見たくないですね(笑)。
現在使っているのは、一眼レフカメラです。講習を受けなかったら、たぶん買おうとも思わなかったのですが、使ってみるとやっぱり全然違うんですよね。思い切って買ってよかったです! 今でも講習で習ったとおり、料理写真は自然光の入るところで撮影。光が少ない冬の時期には、家の2階の日当たりのいい部屋に料理を持っていくなどしています。
またスタイリングをするときは、ひと目見て「美味しそう!」「作ってみたい」と思っていただけるような仕上がりを心がけています。季節感は重視していて、暖かい時期は暖色、寒い時期は寒色になるように気を付けていますね。
それから最近は、食器にもハマッているんです。食器によって料理の見た目がぐっと美味しそうになったり、食べるときの気分も変わってくると思うんですよね。お気に入りは滋賀県の信楽(しがらき)焼きです。陶器フェスに行ったり、信楽の作家さんを扱っているお店のInstagramをチェックしたり、その作家さんが出店するイベントに足を運んだりしています。
時間に追われていた実体験から時短メニューを開発
事務のお仕事をしていたころは、「仕事が終わる」→「子どものお迎え時間までに献立を決める」→「買い物を済ませる」→「料理を作る」といったルーティンを毎日バタバタと繰り返していました。後片付けをしながらキッチンで立ったままご飯を食べる日もあり…少しでもほっと落ち着いてご飯を食べられる時間が欲しいなと思って、苦肉の策として時短レシピを考案するようになったんです。
それでもやはり、レシピで一番大事にしているのは「美味しさ」です。「時短だけど、すごく美味しい」。そう思っていただけるレシピを考案するのがモットーですね。今後は、炊飯器調理で完結する献立やレンジ調理なども、もっともっと増やしていきたいと思っています。
両親が遠方にいることもありワンオペ育児なので、スケジュール管理や急な体調不良のときが一番大変です。仕事と子育ての両立のコツのひとつは、冷蔵庫の中にお気に入りのミールキットや冷凍食品を常備しておいて、お守りとして心にゆとりを持つことですね。それから、忙しいときは本当に目が回るほどだけれど、自分が仕事をしたくてつい無理してしまうので、あえて努力して仕事を制御するようにもしています。
やはり自分の時間を持つことは大事だと思います。Nadiaユーザーのみなさんもお忙しい方が多いと思いますし、私の考案した時短メニューで「自分時間」が増えるお手伝いができれば、こんなにうれしいことはないですね。
料理家になって2年で、夢だったレシピ本を出版!
2022年には、料理家として活動を始めてから約2年で、夢だったレシピ本を出すこともできました。葛城社長のお言葉どおり、フォロワー数が10万になってすぐにお声をかけていただき、本当にうれしかったです。
1冊目の『つくあやの一汁三菜時短献立』(ワン・パブリッシング)は、5週間分の献立を載せていて、本を完コピすれば献立が完成する一冊です。これさえあれば何も考える必要がない! そんな一冊に仕上がりました。2冊目の『つくあやの10分15分時短おかず』(同)はもう少し自由に、冷蔵庫の中身や今日の気分から、好きなメニューを組み合わせて晩ご飯作りができる一冊となっています。
2冊とも、「時短だけど美味しさは妥協しない! 簡単だけど胃袋つかむ!」をコンセプトに、面倒な工程が多いレシピは思い切って削って、作りやすさと美味しさに焦点を当てたレシピ本です。
時短でも美味しく栄養満点な献立が完成(写真提供:つくあやさん)
2冊目に掲載した副菜は、火を使わない料理やレンジ調理のレシピを中心にしているのも、こだわりポイントです。私が最初にひとり暮らししたとき、キッチンに備わっていたのは一口コンロだったので、主菜を作ったらもう火が使えない状況だったんですよね。ひとり暮らしや新生活を始める方は、いろいろ設備がそろっていない場合も多いだろうし、そういった方たちも作りやすいようにレシピを考えています。
その縛りのためにお気に入りの副菜を削らなくてはいけない…ということもありましたが、レシピを必要とする方に届きやすくなるように、しっかりコンセプトを固めました。
レシピ本の撮影は思った以上に体力勝負で。ひたすら料理を作って、味見して、撮影して…。真夏に何度もスーパーに買い物に行って、店員さんに不審がられたり(笑)。そんな中でも「絶対に良い一冊にしたい!」という思いを共有して、並走してくださる編集者さん、ライターさん、Nadiaのみなさまのサポートのおかげで、ようやく一冊が完成しました。近所の書店に行って本が並んでいるのを見たときは、信じられないほどうれしかったです。
レシピ本出版イベントにて(写真提供:つくあやさん)
先日は、書籍の出版イベントでデモンストレーションでお料理を作ったり、初めてフォロワーさんと交流する機会をいただきました。自分の本を手に取ってくださる方とリアルにお会いできたことはすごく感動しましたし、やる気をいただいて、もっとがんばろうと自然と思いましたね。
9歳と4歳の子どもと書店に行ったときには、子どもが私の本を見て「どうしてママがいるの?」って言ってきて。「ママがこの料理作ったんだよ」と教えたら、びっくりして、応援してくれるようになったんです。最近では、仕事をしている私を「ちゃんとやらないとダメでしょ!」と励ましてくれたりもします(笑)。
出版イベントでファンの方と交流(写真提供:つくあやさん)
キッチンに立つ仕事ができることが幸せ
現在は調味料メーカーさま、調理器具メーカーさまとタイアップしたレシピ開発も行っています。たとえばドウシシャさんのフライパンのレシピ開発では、ずっと愛用していたエバークックのフライパンを使ってレシピ開発をさせていただきました。実は一度Instagramでエバークックのアンバサダーに応募したのですが落選してしまったことがあったので、ご縁を繋いでいただいてすごくうれしかったのを覚えています。
それにもともと料理が好きなので、キッチンに立つお仕事ができること自体が幸せで、ありがたいなぁといつもしみじみ思っています。私のレシピで料理を作った方から「美味しい!」とコメントをいただいたときは、言い表せないくらいうれしいですね。
逆に仕事で大変だと感じるのは、体力的な面です。料理家は思った以上に体力がいるなぁと日々感じています。起きている時間のほとんどを、キッチンの立ち仕事で過ごす日もあり…家で完結するお仕事でつい運動不足になるので、意識して体を動かしたり、体をケアすることの大切さを実感しています。
検索する方に寄り添ったレシピを提案したい
料理家としての目標は、常に新しい価値観を持ちつつ、もっと簡単でもっと美味しいレシピを考えていくことです。時代の変化とともに、料理も肩の力を抜けるような工程で作れるものが増えている気がしていて…。今レシピを検索している人がどんな悩みを持ち、どんな料理を探しているのかを常に心がけながら、レシピを考案できる料理家でありたいなと思っています。
私は料理の学校にも行っていなくて、応募前は「本当にNadia Artistになれるのだろうか…」と、なかなか自信が持てませんでした。そんな不安を払拭してくださったのが、Nadiaの編集長の黒澤さんです。レシピの書き方から撮影の仕方まで細かくサポートしてくださり、本当に背中を押していただきました。
Nadiaをご覧になっている方の中には、きっと私と同じように自信がなく、一歩踏み出せない方もいらっしゃるのでは? と思います。でもまずは行動してみて、そこから修正していくのが一番の近道になるのかなと実感しています。Nadiaのみなさまは困ったときに何でも相談できて、それを解決してくださるし、本当に親身になって接してくださるのですごく心強いです!
それから私のレシピを参考にしてくださるNadiaユーザーのみなさまも、「作ったよ」のレポートを写真付きで送ってくださったり、温かなコメントをくださったり、本当にありがとうございます。なかなか返信できない中でも、みなさまからいただいたコメントはいつも目を通して、とても励みになっています! 返信させていただくので、お待ちいただけるとうれしいです…!!
写真:高橋 しのの 文:室井瞳子
つくあや(Aya)'s profile
Instagramフォロワー28万人超(2024年4月現在)の料理家であり、2児の母。最短15分で一汁三菜を作れる献立を5週間分+84品のレシピを掲載した『つくあやの一汁三菜時短献立』(ワン・パブリッシング)が人気に。2冊目のレシピ本『つくあやの10分15分時短おかず』(同)では、食材別レシピと1週間分の献立を中心に全195品のレシピを掲載。フライパンで作る主菜+火を使わない副菜の、実用的な献立集が好評を集めています。
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