料理家になるまでさまざまな業界を経験
若いころは、デザインや服飾系の仕事に興味があり、その道へ進みたいと考えていたんです。ただ、母に国家資格をとることをすすめられ、栄養学部に進学しました。
ところが、いざ就職しようとしたら、バブル崩壊後の就職氷河期。当時、栄養士としての就職は条件的にも厳しくて…。卒業生の80％以上が栄養士の資格とは関係ないところに就職をするという状況だったんです。私も「今、一般企業に就職しないともう二度と一般企業には入れないよ！」と言われて、鉄鋼メーカーに一般事務職として就職しました。
就職して数年過ごしていく中で、「やっぱりデザイン関係の仕事をやりたいな」と思うようになったんですよね。それで、夜間の学校に通い、最低限のスキルを身につけて転職。その後、結婚して夫の海外転勤についていくまでは、デザイン関係の仕事をしていました。
友だちの「美味しい！」で料理が好きに
料理と関係ない仕事をしていましたが、プライベートでは料理をする機会も多かったんです。例えば、独身時代は友だち同士で料理を持ち寄って飲み会などをすることがたびたびあって。そのとき、みんなが「これすっごく美味しい！」「また作って！」と私の作った料理を、よく褒めてくれたんです。そういう何気なくいわれた言葉が本当にうれしくて！ 私が料理をより好きになったのは、このことがきっかけだと思います。
料理の仕事に興味を持ちはじめたのは、結婚後、夫のシンガポール転勤についていき、専業主婦になってから。時間ができたのもあり、現地で食やテーブルコーディネートについて学ぶ機会が増えてその魅力に気づきました。駐在生活中は、現地の日系大手料理教室の料理講師をしていたこともあります。帰国後は病院の栄養事務や、出版社にて料理レシピに関連する仕事にも携わっていました。
レシピを伝えたいという想いからNadia Artistへ
私の母は、とても忙しい兼業主婦でしたが、家事もほとんどひとりでこなし、日々の料理も手を抜くことなく作ってくれていました。でもその作り方はいつも目分量。だから、詳しいレシピを知りたくても教えてもらえず、「おふくろの味って普通受け継いでいくものなんじゃないの〜（涙）」と、思ったこともありました。いつしか「自分の子どもにはそんな思いはさせないぞ！」と思うようになり、ブログなどでレシピを発信し始めていました。
残念ながら子どもには恵まれなかったのですが、だからこそ自分が発信するレシピが、どこかのご家庭の味となって受け継がれたらうれしいな、毎日の食卓で役立ったらうれしいな…と思っていたんです。ちょうどそのころ、Nadiaの存在を知りました。
海外から日本に戻ってきたばかりのころで、情報に疎かったんですね。「主婦から料理家へと転身される方がこんなに増えてきているんだ！」と遅ればせながら気が付き、私も本格的に料理の仕事ができたらという気持ちが湧いてきて…。ブログを通して知り合った、Nadia Artistの先輩料理家さんにも相談し、Nadia Artistに応募しました。
作ってくれた方の感想や笑顔が喜びに
Instagramを始めたのは、コロナ禍になってからです。発信していく中で、フォロワーさんとの交流もあり、「作ってみたい！」から始まり、「このレシピ作りました！」「美味しかったです！」「いつも参考にしてます！」といったお言葉をいただくようになり...。作ってくださった方から感想が届くときは、その笑顔が見えるようで、それがとても励みであり、喜びでもあります。
そしてなによりも、私のレシピを待っててくださる方や、喜んでくださる方がいらっしゃることがとてもうれしいです。ほかにも、「スワイプ画像が見やすい！」と言ってくださる方や、食事についての相談をくださる方もいて。頑張って作ったものが誰かの役に立っているんだなと思うと、レシピを発信してきてよかったなと、胸がいっぱいになります。
ヘルシーな食事のために豆腐マイスターの資格も取得
ありがたいことに、「藤本さんといえばヘルシーレシピ」と言っていただくことが多くなりました。私がヘルシーなレシピを発信しはじめたのは、夫が遺伝性の高脂血症であることがきっかけ。すごく太っているわけではないけれど、毎回血液検査の結果が良くなくて…。そのため、自然と健康を意識したレシピが増えていきました。
ただ、ヘルシーを意識しすぎると、彩りがなかったり、質素なものになったりする傾向がありますよね。飽きずに美味しいヘルシーレシピを食べてほしいという想いから、豆腐マイスターの資格も取得しました。豆腐を作る工程やアレンジ料理なども学び、それで豆腐料理の幅をぐんと広げることができました。Nadiaでも豆腐のレシピはたくさん投稿していますが、豆腐クリームを使った冷製カルボナーラは、自分の中でも自信作。当時、豆腐クリームは見かけるけれど、それをパスタにしているものは少なかったので、自分らしいレシピになったと思います。
「ヘルシーだけど美味しく、作りやすい」がモットー
料理をするときは、「ヘルシーだけど美味しく、作りやすい」を常に忘れないようにしています。簡単で、調理時間が短いに越したことはないですが、「わずかなこのひと手間があった方が間違いなく美味しい！」や、「時短にはならないけどこの工程を加えた方が失敗が少ない」と思った場合は、そこを省かないことを大事にしています。
せっかく作ってくださったのに、結局美味しくなかったら「作って損した...」という気持ちにさせてしまいますよね。だから、自分が食べて「何か違うな」と感じたときはもちろん、夫など身近な人の意見も参考にして何度も作り直すし、納得いかなければレシピにしないこともあります。料理には正解がないからこそ、納得いく状態でレシピを送りだしたいんですよね。
また、私のレシピを参考にしてくださる方は健康に気を遣っている方が中心。なので、実際にレシピを書くときにはダイエットや栄養面でプラスになるようなポイントをできるだけ入れようと心がけています。
健康やダイエットの役に立てるレシピを発信したい
料理のお仕事は、ひと言でいえば本当に好きで、これからもずっと続けていきたいと考えています。今後は、Nadiaを見てくださっている方々に、「ヘルシーなのにこの人の料理って美味しいよね！」という感動を与えられ、「またこの人のレシピを作りたい！」と必要とされる存在になれたら、それに越したことはありません。
先述した通り、夫の体質的なこともあり、「ヘルシーレシピ」を中心に発信してきました。それでも、夫がダイエットに成功したと言えるのはこの1年ほど。やっとリバウンドしていた原因なども分かってきたので、その経験を活かして、同じような悩みを抱えている方々に寄り添えるようなレシピやコラムを発信していければと思っています。
Nadiaの社員のみなさまは、いつもNadia Artistのことを大事に考えてくださり、相談にのってくださったり、本当に優しいなあ…と感じています。料理家としての第一歩を作ってくださったNadiaと共に歩んでいけるよう、そして私からも少しでも恩返しができるよう、これからもみなさまのお役に立てるようなレシピをお届けしていきたいです。
写真：高橋 しのの 文：室井瞳子
藤本マキ's profile
料理研究家、栄養士、豆腐マイスター。海外で料理教室の料理講師を経験。帰国後、レシピ開発やコラム執筆など料理研究家として活動を開始。「美味しさにこだわる糖質オフレシピ」や「見映えはするけど実は簡単な家飲みご飯」を中心にレシピを発信中。
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