家族の「美味しいよ」に支えられて料理好きに

昔から食べることが大好きで、「美味しいものを作りたい!」という気持ちが強く、小学生のころからキッチンに立ってチャーハンやオムライスなど好きなものを作っていました。
もちろん、失敗することもありました。一度、家族に冷やし中華を作ってあげようと張り切ったことがあったんです。ところが麺をゆですぎて、ブチブチ切れてしまうほどやわらかくなって……。落ち込む私に、両親が「美味しいよ」と言って食べてくれた思い出があります。
今思うと、私の料理は美味しくないものもあったはず。でも家族の言葉に支えられて、料理が好きになりました。

昔から小さい子と関わるのが好きで、将来の夢は保育士になることでした。高校卒業後は一般企業に就職したのですが、やはり保育士になりたい気持ちが大きくなり、改めて保育の学校を受験しました。ずっとやりたかったことだし、ここでやらなかったら死ぬときに後悔する、と思ったんです。
保育士になってから三年目に結婚し、出産。三男の育休を経て、保育士は退職することになりました。
退職理由で大きかったのは、我が子ともっと一緒に過ごしたかったこと。加えて母の病気が見つかり、「今の働き方では助けてあげられない」と感じたことです。保育士の仕事は大好きでしたが、母にとっての娘、子どもにとってのママは私だけ。家族を最優先にできる働き方に変えようと思いました。
時短レシピは子育ての救世主

ずっと大好きだった料理ですが、辛い時期もありました。子育てと仕事に追われて、泣いている子どもと一緒に、私も泣きながらご飯を作ったこともあります。すがるような気持ちでレシピを検索する中で出会ったのが、時短・簡単レシピでした。
中でも下味冷凍は、私にとっては革命みたいなもの。味を付けて冷凍しておけば、焼くだけでいい。「こんなに簡単な方法でも美味しくできるんだ!」と気づき、料理がまた楽しいと感じられるようになっていきました。
そこからは、時短・簡単レシピに自分なりの工夫を取り入れて試行錯誤。
保育士時代に子どもが食べやすい味付けや調理の工夫を学んでいたので、それをレシピに取り入れたり。忙しくなるときには、まとめて仕込んで冷凍したり。
「もんで焼くだけ」レシピを考え始めたのも、このころです。電子レンジ調理もいろいろ試して、失敗もたくさんしました。そのときの経験が、簡単レシピを考えるときに生きていると思います。
https://oceans-nadia.com/user/1157527/recipe/499032
あこさんの「もんで焼くだけ」シリーズの中でも特に人気のうま味噌チキン
「自分のレシピを役立てたい」と発信をスタート

保育士退職後は、家でできる仕事を探してウェブデザインの仕事を開業。デザインは未経験だったのですが、気になったらやってみないと気が済まない性分で(笑)。
ところがデザインは在宅仕事なので、一日中ずっと仕事をしている感覚。せっかく転職したのに、子どもとの時間が取れなくなっていました。

そのころにInstagramを見ていて、自分から発信する人たちがいるということに気づいて。しかもそれが仕事につながっている人がいるということを、改めて意識するようになったんです。
育休明けにフルタイムで働いていたときに、私を助けてくれたのもSNSのレシピの存在でした。私も同じようにレシピを発信して、誰かの役に立って、それが仕事につながったらすごくうれしいな、と思いました。
そこで一念発起して、2023年12月にInstagramの講座を受けて勉強をして、2024年2月にアカウントを開設。そこから、どんどん料理家としての活動が広がっていきました。
Nadia Artistになって生まれた料理家としての責任感

Nadia Artistになったきっかけは、編集長の黒澤さんからのご連絡です。最初は、私のような素人が入っていい場所ではない、とお断りする気持ちでいました。ところが、実際に黒澤さんと面談する中で「ご一緒したい!」と気持ちが変わり、挑戦させていただくことになりました。
Instagramを中心に活動していたときはバズらせ方を重視していたのですが、Nadia Artistになってからは、レシピ自体に責任を感じるようになりました。
Nadiaでは文と工程写真があり、分量や手順も丁寧に書かないと伝わりません。身近な材料で誰が作っても再現できるように書かないといけないし、より真剣に料理に向き合うようになりました。

またNadiaには「作ってみた」機能があり、コメントとともに写真も載っていたりすると、本当に作っていただいたんだなと実感が湧いてすごくうれしいです。
ときには「作ってみた」から、アレンジレシピや交流が生まれたりすることも。自分の料理からコミュニティーが広がっていくのはInstagramにはない魅力で、自分がそこにレシピを提供できているというのが誇らしく思えます。
現在は、企業のレシピ開発やInstagram投稿のタイアップの仕事もさせていただいています。
投稿が伸びて企業の方が喜んでくださったときは、「お役に立てた!」と本当にうれしくなります。ひとりで発信していたころは孤独感もありましたが、今は担当の方が喜んでくださったり、「美味しそう」と褒めてくださったり。一緒の目標に向かうチームの一員になれたような感覚があり、心強く感じています。
全工程を見直して取り組んだレシピ本

2025年9月には、初のレシピ本『100万人が保存した!家族に大好評なあこの簡単ごはん』(宝島社)を出版させていただきました。
最初は「本当に私が?」という気持ちが大きく、買ってくれる人がいるのか不安でいっぱいで。発売を告知した瞬間、みなさんが「予約しました!」とコメントをくださり、そこでようやくほっとした記憶があります。
本のコンセプトは、とにかく「作りやすく、より美味しく」。掲載レシピ186品はすべて試作を重ねて、分量や工程を見直しました。
制作中は毎日3、4品ずつ続けて撮影していくことで気持ちが途切れてしまうタイミングもあり、ひとりでコントロールしていくのは大変な作業ではありました。その上、できあがりが似たような写真になってしまい、力不足を感じて落ち込むことも…。しかしそのおかげで、強化していくべき今後の課題も見えてきたと思います。
家族の中心にはやっぱり「食」がある

最近では、「料理が仕事」と子どもたちに自信を持って伝えられるようになりました。レシピ本の出版やラジオ出演があるときは、子どもたちがとても喜んで友だちや先生に自慢するので、少し恥ずかしいときもあります(笑)。
夫は、いつも私が「やりたい!」と言い出したことには反対することなく、応援してくれます。私が言い出したらやるまで気が済まない性格なのを、わかっているからかもしれません。
それから、普段は家族5人で食事をしているのですが、週末には同居の両親と「〇〇パーティー」を計画することがあります。お好み焼きパーティーや生春巻きパーティーなど、とりあえず「パーティーをつければOK」という発想なのですが、美味しい時間をみんなで過ごすのが楽しいし、これからも大切にしていきたいです。
過去があるからこそ発信できる、がんばる人に寄り添うレシピ

料理家としての“自分らしさ”をひと言で表すと「等身大のご飯」。
「料理なんてなくなればいい」とまで思った過去の私がいるからこそ、同じようにがんばる方々に寄り添うレシピが発信できると思っています。料理のハードルはあげずに、でも美味しく作れるように。等身大のレシピをこれからもお届けしたいです。
そして今後は、スタイリングや撮影の学びを強化し、魅力的な写真を撮れる料理家になりたいです。
私が仕事をする上で、支えとなっているのがパティシエの辻口博啓さんの「能力なんか関係ない。やるか、やらないか、それだけ」という言葉です。
この言葉をネットで見つけたのは、Nadia新人賞をいただいたころ。当時は喜びより恐縮する気持ちが強くて、「能力なんか関係ない」という言葉にすごく後押しされたんですよね。一生懸命やっていれば、きっとお役に立てることがある。そう思って活動しています。

最後に、これからNadia Artistを目指すみなさんへ。
すばらしい料理家さんたちの中に身を置くことで、たくさんの刺激を受け、自分の意識やスキルも確実に高まると思います。そして何より、Nadiaのスタッフのみなさんのサポートが本当に温かく、手厚いです。
一 年前の自分は、「私なんかが……」と悩んでいました。そのときの自分に「今すぐ挑戦しなさい!」と、背中を押してあげたい。それくらい、飛び込んでよかったと思える場所です。
写真:高橋 しのの 文:室井瞳子
あこ's profile

料理研究家、料理インスタグラマー。9歳、7歳、5歳の三兄弟の母。2024年2月よりInstagramでレシピの発信を始め、2025年12月現在のフォロワー数は24万人を超える。昨年9月に初のレシピ本、『100万人が保存した!家族に大好評なあこの簡単ごはん』(宝島社)を出版し、好評を博す。「もんで焼くだけ」「下味冷凍」など忙しい人に寄り添う時短・簡単レシピや、いつもの食材・調味料で作れて家族が笑顔になるレシピで人気を集めている。
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