今年も早くも12月。
春にスタートしたこちらのコラムも、今回で16回目を迎えることになりました。
「ヨーロッパの文化と食」というテーマをいただいてこれまでさまざまなことを書かせて頂いてきましたが、先月のフランス・パリでの事件以降、日本でも、今この「ヨーロッパ」という言葉がまた少し違った響きを持って感じられるようになってきていると思います。
そんな最中にあって、「食」というものに一体どんな可能性があるのかと考えてみれば、これは結構、いろいろなことを垣間見せてくれる気がするのです。
今日はゆるりとした感じで、ちょっとそんなことを綴ってみようかと思います。
ヨーロッパ文化を知るための手がかりとして簡単に触れることはあっても、それはあくまで「食」というテーマに関連する範囲での取り扱いになります。
けれど食文化というのは本当に奥が深くて、そこにはそれを担う人たちがこれまでどのように物を考え、何を信じ、何を大切に想ってきたのかということがたくさん含まれています。
たとえばこれまでコラムでもご紹介してきたような、キリスト教徒の肉に対する考え方。
時期によっては魚を食べる方が良いと考えられて、結果、栄養面などの事情からチーズが肉の代用品として登場するなど、日々の食生活にもさまざまな影響を与えてきたのでしたよね。
あるいは、イスラーム教徒には豚肉を食べない習慣があることも有名です。
それぞれにさまざまな理由や考え方があってのことですが、ちょっと挙げてみるだけでも、私たちは日々の「食べ物」の中から異文化のことを少しずつ学べるような気がします。
ヨーロッパにはたくさんの移民が住んでいて、道行く人の肌の色も、目の色も、髪の色も、みんなみんな違っています。
けれど私たちの住む日本がそうであるように、だからこそさまざまな美味しい食べ物に触れることができ、今までに知らなかった食事の楽しみを見つけられるとも言えるのです。
イギリスで食べられるカレーのおいしさ。
フランスやイタリアのアフリカ風料理。
ドイツのトルコ風ケバブ。
ポルトガルのラテンアメリカ風料理。
スペインのアラブ風料理――。
これらはみんな、そんな異なる食文化の融合から生まれてきた美味しい食べ物たちですね。
最初はきっと、「わぁなんだろうこれ!美味しいのかな??」――。
そんな素朴な好奇心やワクワク感から、すべては始まってきたのだと思います。
毎日のごはんを、美味しく食べたいと思うこと。
なじみのない食べ物やお料理に興味を持って、その味を知ったり、作り方を知ったり、そしてそのお料理にまつわるエピソードに心を躍らせたり――。
もしかしたら、お料理が好きで、そして食べることが好きなみなさんが日々普通になさっているそんなことが、世界を知るための最初の手がかりになるのかもしれません。
人が大切に思い、美味しいと思っているものを知ることは、実はとても重要なこと。
相手の大切にしているものを互いに知ろうとし、そしてそれを尊重する――。
たとえささやかなことのように見えても、それこそが相手に敬意を払うということでもあると思うのです。
そんな、世界を知るための、ひとつの入口としての「食」――。
誰にとっても、自分の慣れ親しんだ故郷の料理は何ものにも代えがたい特別なものです。
だからこそ、時には食べたことのない国のお料理を味わってみたり、自分でも作ってみたりしながら、その国に想いを馳せるのはとても素敵なこと――。
このコラムも、何かの形でそんなきっかけのひとつにでもなれば嬉しいな、と思っています。
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