四川省うまれの発酵調味料「豆板醤」
豆板醤とは、そら豆と赤唐辛子を主原料に、塩などを加えて発酵・熟成させた、中国・四川省生まれの発酵調味料です。中華調味料の中でも、日本の家庭に普及している調味料のひとつですよね。
元々は、唐辛子が入らないそら豆の発酵調味料だったそうですが、今では唐辛子入りが定番。麻婆豆腐や担々麺など、辛い四川料理を作るのに欠かせない調味料で、現在も四川が一大産地です。
でも、実は豆板醤に使われる「唐辛子」が中国の料理書に登場するのは、19世紀になってからなんだそう。それまで庶民の食卓にのぼることはあるものの、レストランや料理書に登場するのは最近のことである、と各中国料理の研究書に書かれています。
驚いたのは、昭和4年発刊の後藤朝太郎『支那料理通』で四川料理について、野菜をふんだんに使った日本人の口に合う料理、と書かれていること。中国での見聞を記録したものとのことですが、四川料理が辛いということがまったく書かれていないそうです。つまり、四川料理が現在のように辛い料理になったのは、100年も経っていないということなんです。
豆板醤の歴史は300年ほどと言われていますが、このことを考えると、唐辛子入りの調味料になったのは100年くらいのものではないかと思います(これに関して、はっきりとした記述はまだ見つかってないようです)。
「中華=辛い」のイメージは、「豆板醤」が普及したから!?
「四川料理=辛い」、さらにいえば「中華料理=辛い」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか? それは、「豆板醤」が、代表的な中華調味料として日本の家庭で普及したからではないかと思います。
炒め物に豆板醤を使うとなんとなく中華感がでますし、日本の中華の定番「麻婆豆腐」や「えびチリ」には豆板醤が欠かせませんよね。「麻婆豆腐」は、1980年代ころに盛んにテレビCMで見た記憶があり、豆板醤の存在も同じ時期に知りました。
豆板醤はただ辛いだけの調味料ではなく、発酵のうま味もあわせ持っているので、日本の食卓に受け入れられやすかったのではないかと思います。うま味で料理を引き立て、辛味で味をピリッと引き締めてくれるので、中華料理だけでなく、和風でも洋風でも、ひと味足りないときに使うのもおすすめですよ。そら豆と唐辛子と塩というシンプルな味なので、どんな料理にもあわせやすい辛味調味料です。
おすすめは伝統製法で作られたもの♪
私のおすすめは、「郫県豆瓣(ピーシェンドウバン)」。本場、四川省成都(せいと)市郊外の郫都(ひと)区で作られた豆板醤で、伝統製法で作られたものです。日本で普及している豆板醤の味とは異なるので、はじめは驚くかもしれませんが、本場の味を楽しめますよ。
ちなみに、日本で普及している豆板醤も、メーカーごとに辛さや塩味に差があります。「四川」とついているものは特に辛い傾向にありますし、砂糖入りのマイルドなものもあります。購入の際には、裏面ラベルを見てみると良いですよ。
豆板醤を使ったとっておきのレシピ
おうちでお手軽♪ナシゴレン
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/128269
豆板醤とナンプラーを使って、おうちで手軽にできる「ナシゴレン」のレシピです。ナシゴレンとは、本来は「サンバル」というインドネシアの唐辛子調味料を使って作る辛いチャーハン。豆板醤で作ると、手軽で美味しいのがうれしいポイントです。
●詳しいレシピはこちら
インドネシアのスパイシーすぎるチャーハン「ナシゴレン」
お酒がすすむ~!ピリ辛コンビーフペースト
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/458272
イタリア・カラブリア州の名物、ピリ辛でパンに塗れるソーセージ「ンドゥイヤ」からイメージした、混ぜるだけで美味しい簡単おつまみです。
●詳しいレシピはこちら
材料2つでパンもお酒もすすむ♪ピリ辛コンビーフペースト
コツは〇〇するだけ!絶品♪麻婆豆腐
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/458273
中華調味料は「豆板醤」のみでOKの簡単レシピ。とっても本格的な味に仕上がります。コツはたったひとつ。ひき肉をカリカリに炒めるだけ! たったそれだけで、美味しさがかなり変わりますよ。
●詳しいレシピはこちら
ひとつのコツだけで絶品になります!「麻婆豆腐」
やみつき間違いなし!豚肉とキャベツのピリ辛味噌炒め
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/458286
豆板醤を加えたうま辛い四川料理「回鍋肉」風の、豚肉と野菜の味噌炒めです。「野菜炒めは強火でサッと」というイメージがあるかもしれませんが、この作り方はゆっくり作って大丈夫! とっても美味しく仕上がるこの方法、ぜひお試しください。
●詳しいレシピはこちら
仕上がり回鍋肉「豚肉とキャベツのピリ辛みそ炒め」
いかがでしたか? 最後に、豆板醤の使い方について少し説明したいと思います。日本では「辛味をちょい足し」するときに活用するイメージですが、本来は「そら豆原料の味噌」。現地では、日本の味噌のように「メインの調味料」として使われています。日本人にはその使い方では流石に辛すぎるので、味噌や醤油などであわせ使いをすることが多いですよね。
そして、豆板醤はしっかり炒めることで香りや味が増すことを覚えておくと良いですよ。炒め物に使うときも煮込みに使うときも、まずは油で炒めるのが、美味しく豆板醤を使うポイントです。使い方もマスターして、豆板醤を活用してみてくださいね♪
これまでの連載はこちら!