今こそ見直したい「醤油」の魅力
醤油は、日本の味そのものともいえる調味料です。アジアの国々にはその国ならではの醤油がありますが、それによってその国の味ができあがっていると感じます。
日本の醤油は、大豆・小麦・食塩が主な原料。発酵の過程で大豆のタンパク質がうま味のもとになるアミノ酸に分解され、小麦のでんぷんが甘味や香りのもとになるブドウ糖に分解されます。「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」、「うま味」の基本の五味を含んだ複雑な風味が特徴です。
煮物、魚の煮付け、照り焼き、麺類のつゆなどの調味料としてはもちろん、刺身やお寿司などをつけて食べる「つけだれ」、おひたしや料理にかける「ソース」として、料理も素材も選ばずに使われます。
アメリカでは「ALL - PURPOSE SEASONING(オールパーパスシーズニング)」、つまりさまざまな料理に使える万能調味料と紹介され、海外向け商品にはこの言葉がラベルに表示されているものもあります。
私たちにとって、あらゆるものに醤油を使うことは当たり前で“万能調味料”という認識はありませんでしたが、確かにさまざまな使い方ができる調味料ですね。
醤油が育んだ日本の食文化
歴史を見ると醤油のルーツは、中国の「醤(ジャン)」であるといわれています。いつごろ日本に伝わったのかは定かではないそうですが、飛鳥時代には「醤(ひしお)」の記録があるそうです。
当時の醤は穀類を発酵させたもので、味噌に近いものだったとのこと。液体の調味料になったのは室町時代で、このころに「醤油」という言葉も登場し、工業化もはじまりました。
醤油文化が花開いたのは、江戸時代に入ってから。今では日本料理の代表である蕎麦や寿司、蒲焼きがこのころ生まれています。どれも醤油なしでは味わえない料理、醤油があったからこそ生まれた料理ですね。
和食だけでなく、今ではステーキに醤油ソース、サラダに醤油味のドレッシングも一般的。「ALL - PURPOSE SEASONING」といわれる通り、和食だけでなく海外の食文化にもマッチしますし、醤油を使うことで、主食であるご飯との相性も良くなります。
さまざまな国の料理が家庭で作られるのは、世界中を見渡してみても日本くらい。それは海外の料理も醤油を使えば「和風」になり、受け入れやすかったからではないでしょうか。
日本の家庭料理のバリエーションが豊富でさまざまな料理を作る能力が高いのも、醤油の存在が大きいのでは、と考えています。
使い分けで料理上手に!醤油の種類と特徴
醤油は地域によっても種類があり、関東では濃口、関西ではうす口、九州では甘い、というのはよく知られていますね。
最近では“生醤油”という商品も主流になり、現代人の味覚に合うように種類が豊富になっていると感じます。
ここでは代表的な種類の違いについて説明します。
「濃口醤油」
生産量の8割以上を占める、日本で最もポピュラーな醤油。深みのある色で、うま味、甘味、酸味、苦味を合わせ持った、醤油らしいしっかりとした風味があります。煮物や照り焼きなど、しっかりした味と美味しそうな茶色い色を出すには濃口がおすすめ。
「うす口醤油」
主に関西で使用される醤油で、濃口醤油と比べると、1割ほど塩分が高め。色味が淡く、マイルドな香りが特徴なので、食材の色合いを生かしたい料理に使われます。
「たまり(溜り)醤油」
色が濃くとろみのある醤油で、濃厚なうま味、独特の香りがあります。小麦の量が少なく、主に大豆から作られます。照り焼き、角煮、佃煮など、濃厚な色、風味をつけたい料理におすすめ。
「再仕込み醤油」
2度醸造するような製法から「再仕込み」と呼ばれています。別名、甘露醤油、二段仕込み醤油ともいいます。仕込みの際に使用する食塩水の代わりに、生揚げ醤油(「もろみ」から搾ったままの醤油)で仕込むので、濃厚な味わいに仕上がります。刺身、寿司など、漬け、かけ用などたれとしての使い方に向いています。
「生(なま)醤油」
通常の醤油造りでは、加熱して微生物を取り除く「火入れ」という工程を行ないます。これによって深みのあるコクが加わりますが、生醤油は「火入れ」をしていないもののことをいいます。そのため、すっきりとしたうま味と穏やかな香りが特徴。野菜にかけたりさっと炒めたり、素材の風味を生かす料理に向いています。
それぞれの特徴を知って、料理に合わせて醤油を使い分けてくださいね。
醤油を使ったとっておきのレシピ
ピーマン丸ごと!焼きピーマンの焦がし醤油和え
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/492986
こんがりと丸焼きしたピーマンに、ジュッと醤油をまわしかけ、醤油の香ばしさとうま味を際立たせた一品。種もやわらかいのでペロリと食べられますよ。ご飯がすすむ野菜の副菜。我が家の定番作り置きおかずです。
●詳しいレシピはこちら
ピーマン丸ごと!「焼きピーマンの焦がし醤油和え」
ご飯がすすむ!ペルー風牛肉の炒め物
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/500844
南米に位置するペルーでは、醤油は一般的な調味料。国民的料理とも言えるこの料理の味の決め手も醤油です。ご飯と一緒に食べるのですが、相性はもちろん抜群! 肉も野菜もたっぷりで大満足の一皿です。
●詳しいレシピはこちら
ペルー風牛肉の炒め物「ロモ・サルタード」
おかずにもなる!豆の和風マリネサラダ
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/249983
マリネ液に醤油を加えることで、ご飯にもあうサラダに仕上げました。和食の献立にも合う、作り置きOKな副菜です。香ばしく焼いたれんこんとまいたけが、よいアクセントになっています♪
●詳しいレシピはこちら
おかずにもなる!豆の和風マリネサラダ
驚きの美味しさ!フルーツとビターチョコの醤油セミフレッド
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/500680
セミフレッドとは、イタリアのアイスケーキという感じの冷たいスイーツです。洋酒の代わりに醤油を加えて香り良く仕上げました。醤油のフレーバーホイールには洋酒やフルーツの香りもあるため、相性ばっちり。塩味との相対効果で甘さもぐっと引き立てます。
●詳しいレシピはこちら
フルーツとビターチョコのしょうゆセミフレッド
“醤油には複雑な風味がある”ことを書きましたが、キッコーマンのホームページに、醤油の味の特徴を示した「フレーバーホイール」が紹介されています。
フレーバーホイールというとワインが有名ですが、香りや味の特徴を表す言葉を丸く配列した図のことです。日本の醤油からは91種類の特徴が引き出すことができたそうで、その風味の特徴が図になっています。
セミフレッドのレシピのところにも書きましたが、洋酒やフルーツの風味もあったので、お菓子作りの隠し味に醤油を使ってみたら、これがよく合う! 普段何気なく使っている醤油にこんな新しい面があったのかと驚きました。
共通の言語で評価したり、料理との相性を語るためのツールですが、醤油と思いがけない食材の相性が見つかったり、新しい醤油の使い方が生まれるかもしれません。料理好きのみなさん、ぜひ参考にしてみてください。
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