うま味たっぷりの発酵食品「アンチョビ」
アンチョビとは、小魚、主にカタクチイワシを塩漬けにして、数か月から一年熟成発酵させてからオイル漬けにしたもの。カタクチイワシ科の魚のことを英語で“アンチョビ”と言いますが、日本では主にこの塩蔵した加工食品のことを指します。
アンチョビは、イタリアの食材として有名なので、パスタやピザなどで食べることが多いと思います。私も初めてアンチョビを食べたのは大学生のころ、ピザのトッピングとしてでした。友人がイタリア料理店でアルバイトをしていて、「小さな魚をトッピングしただけなのに高いんだよ!」と言っていて、興味をひかれ試してみたのが最初です。ピザにのっていたアンチョビは細かく切られ、ところどころに散らされているだけ。なのに抜群にうま味が出ていて不思議と美味しい、というのが私の最初の感想でした。
それもそのはずで、アンチョビは発酵食品。魚のうま味成分がギュッと凝縮されています。塩分も強いので、少し加えるだけで料理に深みのある塩気が加わって味がまとまります。また、独特の風味がありますが、食べた後に残るクセになる味です。
アンチョビポテトやキャベツのアンチョビ炒めなど、居酒屋で見かけると、ついつい頼んでしまいませんか? 家庭でもよく登場する定番食材で、自分ですぐにでも作れる料理なのに、アンチョビのあのうま味を想像すると食べたくなりますよね。そういう人が多いから、イタリアン以外の飲食店でもメニューになっているんでしょうね。
アンチョビとナンプラー、イタリアとタイ
料理の味を引き立てる調味料として使うだけでなく、もちろんそのまま食べても美味しい食材です。イタリアではパンにのせてブルスケッタにしますし、スペインではピクルスなどと一緒にピックに刺して、ピンチョスにします。フランスのニース風サラダの具にもアンチョビは欠かせません。塩気が強いので、塩分には注意が必要ですが、調味料と食材の両面を持つ便利な食品といえます。
イタリアの魚醤「コラトゥーラ」は、アンチョビをさらに熟成させたエキスです。ナンプラーなどの魚醤も、カタクチイワシ科の魚を原料とすることが多く、アンチョビ同様に小魚を塩漬けして長期熟成発酵させ、液体部分のみを取り出したもの。
まったく違う食文化ですが、どちらも小魚を塩漬けした発酵のうま味と味を料理に使用するという共通項があるのは、とても面白いなと思ってます。実はアンチョビを使うイタリア料理をナンプラーで味付けしても、とっても美味しいんです。アンチョビは固形のナンプラーと考えると、イタリア料理だけでない使い方のアイデアが広がりそうですね。
料理によって使い分けをすると◎!
アンチョビは、日本では主に瓶に入ったタイプ、缶詰タイプ、チューブのペーストタイプが売られています。
瓶詰めと缶のものは両方とも骨が取り除かれたフィレ状。どちらも同じように使えますが、瓶は蓋ができるので少量ずつ取り出して使うことができます。缶のものは形がきれいに保たれているのでトッピングやサラダにするのに向いています。ペーストは少量使いたいときに便利。パスタソースやドレッシングに加えたり、パンに塗るのに向いています。
イタリアのシチリア産や、スペイン北部のカンタブリア海産のカタクチイワシで作ったものが美味しいと言われています。
アンチョビを使ったとっておきのレシピ
お酒がすすむアンチョビのピンチョス
きゅうりのピクルス、オリーブ、アンチョビを楊枝に刺すだけで作れる、スペインタパス。ただ組み合わせるだけで美味しいという、驚きのスペイン料理です。
●詳しいレシピはこちら
なんて簡単!なんて美味しい!お酒がすすむオリーブのピンチョス
レンジで作れる魅惑のアンチョビパスタソース
オリーブ、ケーパー、アンチョビ、トマト缶。ほぼ保存食材だけでできるパスタソース。なんとも言えない魅惑の味です。ソースは電子レンジで作れるので、忙しい日におすすめ。
●詳しいレシピはこちら
娼婦風という名のパスタ『スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ』
春菊×アンチョビの絶品サラダ
春菊はサラダがいちばん美味しい! と思ったレシピ。料理教室でブームになった人気のサラダです。クセのある野菜×クセのあるアンチョビ=美味しい!
●詳しいレシピはこちら
春菊1束あっというま!『春菊とアンチョビのローマ風サラダ』
確実に美味しい!アンチョビバタートースト
アンチョビをパンにのせる料理はヨーロッパ各国、さまざまなものがあります。これはとてもシンプルですが、さっと作れて確実に美味しいおつまみ。焼いているときの香りの良さもごちそうな一品です。
●詳しいレシピはこちら
シンプルうまい!『アンチョビバタートースト』
混ぜるだけ!オリーブとアンチョビのクイックブレッド
グリーンオリーブとアンチョビが入った、おつまみブレッド。オリーブ×アンチョビの組み合わせは相性抜群です。生地はボウルに材料を入れてゴムベラで混ぜるだけ。発酵いらずです。
●詳しいレシピはこちら
発酵不要!『オリーブとアンチョビのおつまみクイックブレッド』
使い切れないアンチョビが眠っていたら、このうま味食材を使わないのはもったいない! レシピを参考に、いろいろな使い方を試して、アンチョビの魅力ある味を堪能してください。
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