古代からさまざまに活用されていたはちみつ
はちみつは、蜜蜂が花の蜜を集めて、巣の中で加工・貯蔵し、私たちが食べている甘い「はちみつ」になります。花の蜜を集めただけではあの濃度のある甘い蜜にはならず、蜂の器官を通すことでできあがる、蜂によって加工された食品です。
人間とはちみつの出合いは古く、紀元前1万年前のジンバブエの壁画に、はちみつ採取をしている様子が描かれています。高いところに作られる野生の蜂の巣から、落ちたり刺されたりする危険を冒して採取していた様子が、壁画として残されています。砂糖など甘い調味料がなかった時代、はちみつの甘さは相当な魅力があったのではないかと想像できますよね。
巣箱を作ってはちみつを作る「養蜂」は、紀元前2600年ごろのエジプトの壁画に残っており、このころに地中海周辺から養蜂が始まって世界中に広まったと言われています。「ミード」というはちみつ酒も旧石器時代から作られていたようですが、甘さだけではなく薬効や栄養価の高さも古代から知られていたようで、食品の保存、怪我の治療、内服薬、栄養剤など、さまざまな用途に使われていたそうです。
魅力は独特のコクと優しい甘さ
料理に使う場合、肉がやわらかくなったり、カロリーを抑えたり、栄養価が高いので砂糖より良い、などといったことも耳にしたことがあるかもしれません。薬効としての使われ方を見ても正しいように思いますが、実は使う量にもよるので、私は「はちみつ風味がこの料理には美味しそうだな」と思うときに使うのがベストだと思っています。
たとえば「はちみつ×醤油」は照りも出るので照り焼きとして最高ですし、「はちみつ×味噌」や「はちみつ×バター」は想像しただけでも美味しいのがわかりますよね。「はちみつ×マスタード(からし)」も大好きな組み合わせで、この連載のマスタードの回で「ハニーマスタードチキン」のレシピを紹介しています。
ちょっと飲みにくいハーブティーにはちみつを少したらすと、途端に飲みやすくなりますし、クセの強いブルーチーズとはちみつの組み合わせは、相乗効果なのかとても美味しくなります。独特のコクと優しい甘さが美味しいのはもちろん、合わせる食材のクセを和らげて味を良くしてくれる調味料としても活用しています。
商品によって風味がまったく異なるはちみつ
はちみつは、商品によって色合いが違うことがありますよね。透明感のあるものから濃い茶色のもの、黒に近いようなものもあります。これは、蜂が採取した花の種類、採取の時期、採取方法、加熱の有無などによって出てくる差で、それぞれ風味もまったく異なります。
多分ほとんどのはちみつには、「レンゲのはちみつ」、「アカシアのはちみつ」などといったように、蜜源になった花の種類が書かれていると思います。蜜源植物が数種類ある場合は「百花蜜(ひゃっかみつ)」と呼ばれます。
蜜源になった花によって風味が違ってきますので、料理に使う場合、あまりクセのない「レンゲ」「アカシア」「百花蜜」を選ぶことが多いです。また、加熱の有無はどちらが良いということではなく、加熱済みのはちみつは味や香りのクセが少ないので何にでも合わせやすく、非加熱のはちみつは蜜源の香りが強く酵素が多い特徴があります。
パッケージのどこかしらにこれらの情報が書いてありますし、一般的に色の薄いはちみつはクセが少なく、濃い色のものは風味が強いので、選ぶ際の参考にしてみてください。水あめなどの甘味料を加えているものもありますが、せっかくならはちみつの風味を楽しみたいので、加えていないものがおすすめです。
はちみつを使ったとっておきのレシピ
調味料2つで絶品甘辛味の照り焼きチキン
https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/483178
「はちみつ×醤油」は相性抜群! 手軽に美味しく照り照りに仕上がって、コクはあるのに甘さはすっきり。しょうが焼きやポークソテー、グリルチキンにもこの味付けがよく合うので、覚えておくと和風おかずが手軽に作れるようになりますよ。キッチンペーパーを被せて焼くと油が飛び散らず、余分な油も拭き取れるので便利です。
●詳しいレシピはこちら
『はちみつ照り焼きチキン』調味料2つで絶品甘辛味!
おやつにもおつまみにも◎!やみつきじゃがいも
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新じゃがを皮ごとはちみつとバターで照り煮にして、仕上げに醤油をひとたらし。おかずにもおやつにもおつまみにもなる、やみつきの味。新じゃがいもは皮の香りの良さも味わえる、旬の一品です。新じゃがいもでない場合は、レンジ加熱をせず、生から炒めてください。
●詳しいレシピはこちら
『ハニーバターポテト』甘じょっぱい味でヤミツキ!
食べごたえばっちりで、栄養満点のおやつ
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はちみつを煮詰めて、ナッツをたっぷり加えてキャラメルのように固めた、栄養満点のおやつ。ジョージアの「ゴジナキ」というスイーツですが、日本のおこしに似ています。この地域で多用されるかぼちゃとひまわりの種を使っていますが、くるみやアーモンドなど好みのナッツに変えてもOK。熱したはちみつは非常に熱いので、やけどには十分気をつけてください。
おまけに、地中海沿岸の国モロッコのオレンジの食べ方をご紹介します! 食後のデザートにフルーツを食べる地域は多いですが、モロッコでは、オレンジにはちみつとシナモンをふりかけて食べるのが定番です。はちみつとオレンジの酸味がとてもよく合い、シナモンの香りが食後のデザートにぴったりです。
モロッコの定番! 簡単で美味しいですよ♪
作り方は、オレンジの皮をりんごの皮をむくようにナイフでぐるりとむき(薄皮も一緒に)、横に1cm幅の輪切りにします。お皿に並べてシナモンをふりかけ、その上からはちみつをかけたらできあがり! オレンジはよく冷えていた方が美味しいですよ。
ちなみに、メロンやいちじくにはちみつをかけるのもよく見かける組み合わせで、プラス生ハムをトッピングするとおしゃれな前菜、おつまみになります。
庭で養蜂をしている知人が採取するはちみつは、季節で色も香りも違います。春は透明感のある薄い色で華やかな花の香り、夏は色が少し濃くなり、甘み・酸味を強く感じます。秋は花が少なくなるので蜜になるまでに時間がかかるらしく、色も風味も濃厚な感じです。そして冬は採れません。
花が咲き乱れる春、だんだん緑が増える夏、花が終わった実りの季節の秋、という景色がはちみつの味から感じられるのは感動です。
はちみつは蜂が集めている、というのは当たり前に知ってるつもりだったのですが、季節による違いを味わうことで、せっせと集めていることを実感。ありがたい食べ物だと思うようになりました。味の違いを楽しみつつ、美味しくいただきたいですね!
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