こんにちは!庭乃桃です。
コラム第2回目の今日は、「ヨーロッパの食」を見ていく上では欠かすことのできないもの、ヨーロッパの四季とキリスト教についてお話ししてみたいと思います。
四季と、キリスト教・・・?
特にキリスト教なんて、ちょっと難しそうですよね。
・・・でも大丈夫!
それはヨーロッパの人々にとって、毎日の暮らしの中に息づいているちょっとした「決まりごと」のようなものでもあるんです。
まずはちょっと、私達の暮らす日本との違いを見ながらお話していくことにしましょう。
日本には、四季折々の旬の食材というものがありますね。
春になれば、桜を見ながらお花見弁当を広げ、山菜に舌つづみを打つ。
夏は夏で、滋養のつくうなぎを食べたり、そうめんを用意して蒸し暑さの中でも涼をとろうとします。
秋は、実りの秋。新米やきのこ、栗やお芋、秋刀魚など、おいしいものがたくさん出回りますね。
そして冬は、寒さによって甘みを増した大根やねぎ、白菜などがおいしくなります。
こうした光景には、「食べるのが好き!」「お料理が好き!」という方なら、きっと皆さんワクワクされることでしょう。
やわらかな水と気候に育まれた、目にも美しい多彩なお料理の数々。
5月になればお茶を摘み、田植えをし、秋には稲刈り、そして冬に備えた漬け物作り――。
今は農産物の栽培技術も進み、季節を問わずに食材が手に入ることも珍しくない時代ですが、それでも私達は、知らず知らずの内にこうした日本ならではの「食の営み」の中に身をおいているんですね。
それでは、ヨーロッパの場合はどうでしょうか?
もちろん、ヨーロッパにも四季はあります。
そして日本でお正月を祝い、お花見を楽しむように、その季節ならではの行事というのがあり、季節ごとの旬の食材があります。
ただ一般に、ヨーロッパの四季は、日本の感覚からすると 「春」や「秋」がやや短く感じられると思います。
これは場所によってもかなり違いますが、たとえばスペインやイタリアなど南の方の地域では、5月になればもう初夏というより真夏のような陽射しなんてことも珍しくはありません。
また、私が一番長く住んでいたドイツという国では、9月になればもう肌寒くなり、ほぼ秋の雰囲気。洋服を買おうとお店に入っても、売られているのはすでに秋冬もののセーターばかりということもありました。(※もちろん、例外的に残暑の厳しい年というのはあります。)
そしてその秋はあっという間に終わってしまって、あとには、長く厳しい冬がやって来ます。
必ずしも肥沃な土地ばかりとは言えないヨーロッパは、季節によっては作物を育てること自体が難しいこともありました。だから昔の人達は、長く厳しい冬に備えて相当の準備をしておかなければならなかったのですね。
ヨーロッパは、気候も風土も日本とは違います。
日照時間や、気温・湿度も違うので、そもそも体に必要となる栄養素が変わってきます。
また手に入る食材も、育ちやすい作物も、育てやすい家畜も、地域ごとにさまざまな特徴があります。
たくさんの種類の作物が一年を通じてお店に並ぶ日本とは違い、特に野菜など、時期を逃すと新鮮な状態では本当に手に入らなくなるものも多いのです。
冬が厳しい分、春の訪れは一層喜ばしいものとなり、夏が長い分、つかの間の秋を大いに楽しもうとする――。
そんなヨーロッパの「食」を取り巻く環境は、当然、日本のそれとはだいぶ違ったものになるはずです。
そしてもう一つ、ヨーロッパの「食」を見ていく上で、日本にはないとても重要な要素というのがあります。
それが、キリスト教という宗教です。
ご存じの通り、キリスト教は、313年にローマ帝国によって国教と認められて以来、ヨーロッパでとても大きな影響力を持ってきました。
特に「食」との関わりで言えば、キリスト教徒が守るべきとされる教会暦というカレンダーにのっとって、肉を食べてはいけない時期、羊など特定の食材を使ったお料理が好まれる時期など、一年を通じて、食べ物についてもある一定の「決まりごと」があるのです。
といっても、現在ではよほど信心深い人でもない限り、皆が皆、この決まりごとを忠実に守っているわけではありません。
・・・でもね、ちょっと考えてみて下さい。
たとえば私達だって、「土用の丑の日!うなぎをどうぞ!!」なんていうスーパーの広告を見たら、「あら、せっかくだから今日はうなぎを買おうかしら。」 なんて思ってしまうことはありませんか?
こうした感覚に近いことは、おそらくヨーロッパの人達の中にもあるんです。
それほど信心深くない人であっても、お魚屋さんの前に「四旬節です。お魚料理をどうぞ!」なんていう看板が出ていたら、「あ、そうね、今はつつましく過ごさなきゃいけない時期ですもの。今夜はお肉よりお魚にした方がいいわね。」 なんて、思ったり――。
それほど張り切って「守らねば!」と思っているわけではないけれど、「どうせだったら、せっかくだったらそれにしておこうか!」みたいな感覚とでも申しましょうか。
ヨーロッパといえども、皆が皆、熱心なキリスト教徒というわけではないのですが、こうした生活の中に根ざした意識はやはりあなどれません。
そして、キリスト教というのがまた、そうした人々の中に溶け込んでいる感覚を上手にいかしながら大きくなっていった宗教でした。
キリスト教が広まる前、ヨーロッパの先住民達は、季節の変わり目に合わせてさまざまなお祭りを行っていました。
春が来れば、春の女神を迎える祭りを。
作物が実れば、収穫に感謝する喜びの踊りを。
そして冬の前には、家畜を屠(ほふ)って神に感謝を――。
そんな、季節の移り変わりとともに刻まれた数々のお祭りの記憶は、キリスト教が入って来てもなお、なかなか消えることはなかったのです。
そこでキリスト教は、それをそのまま自分達の暦の中に取り込んで、キリスト教の礼拝や儀式として新たな命を吹き込みました。
大事とされていることは、今までとそう変わらない――。
けれど、やり方をキリスト教式に変え、主イエス・キリストの生涯と関連づけて、そこに新たな意義と解釈を加えました。
それが最もよくわかるのが、まもなく行われるイースター(復活祭)という行事なのです。
そこで次回は、そのイースターと「食」との関わりについてお話してみたいと思います。
イースターの食卓を彩る、おいしいお料理の話も出てきますよ。お楽しみに♪
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