こんにちは!庭乃桃です。
連載第5回、本日の主役は、アスパラガスです。
みなさん、「野菜の王様」というと、一体何を思い浮かべますか?
うーん、普段何かと出番の多い、キャベツや玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、はたまた大根?
それとも、香りや食感の良さはピカイチ、やっぱり季節限定でしかいただけない春野菜や夏野菜?
あるいは、秋の味覚、旨味たっぷりのきのこやお芋などでしょうか?
このあたりは、人によってそれこそさまざまな答えが返ってきそうですね。
けれどこの質問をヨーロッパの人にすると、返ってくる答えはおそらく「アスパラガス」というのが多いのではないでしょうか。
それはなぜかというと、アスパラガスが、ヨーロッパの春の訪れを告げる代表的な野菜だからです。
というのも、昔は冬の時期、食べられる野菜と言えば、酢漬けにしたキャベツやきゅうりのピクルス、そして玉ねぎくらいしかありませんでした。
そんな中、春になると芽を出すこのアスパラガスは、みずみずしくて香りが良く、甘みが強くて何とも幸せな気持ちになれる野菜だったんですね。
そう、まるで日本人にとっての「たけのこ」のような存在。それが、厳しい冬を越え、春を待ちわびたヨーロッパの人々にとっての「アスパラガス」なのです。
そんなアスパラガスの旬は、だいたい4月~6月(ヨーロッパの中でも地域によって多少違います)。
そして日本でも、この5~6月がアスパラガスの最もおいしくなる時期と言われています。
ですから今月は、そんなアスパラガスの秘密を探りながら、おいしい茹で方(コラム第5回)、ヨーロッパでの長い歴史(→第6回)、シーズンを迎えたヨーロッパの様子(第7回)など、全3回に分けてたっぷりとお伝えしていきたいと思います。
* *
ところで、今日のヨーロッパで「アスパラガス」というと、それはむしろホワイトの方を指します。
ホワイトアスパラガス――。
最近では生で売られているものを見かけることも多くなりましたが、昔は日本ではほとんど缶詰でしかお目にかかったことがありませんでしたよね。
それもそのはず。実はこのホワイトアスパラガスというのはグリーンに比べると足が早くて、新鮮でないと少し苦味が出たり、あまりおいしくいただけません。そこで、日本だけでなくヨーロッパでも、歴史的に缶詰に加工されて食されることが多い野菜でもありました。
しかしこのホワイトアスパラガス、一体どうやって作られているかというと、何のことはない、グリーンアスパラガスに盛り土をして日光に当てないように育てたものなんです。
まるでウドみたいですね。とはいえ、それが最高に難しく、手間がかかります。
しかも収穫の時も、みずみずしくて穂先がやわらかいので傷つけずに摘み採るのはとても大変。当然、すべてが手作業になってしまいます。
食べる部分はアスパラガスの若芽の部分。なので、ホワイトの場合は特にもろく、収穫後は温度・湿度管理もしっかりしておかないと一番の魅力である風味が失われ、筋が入ってしまいます。
そんな繊細なお野菜ですから、食べる時もグリーンアスパラガスとは違うやり方が必要になります。
皮を多め、且つ厚めにしっかりとむき、お湯にむいた皮とバター、レモン汁を加えて一緒に茹で上げるのです。要は茹でるお湯の中で水っぽくならないように仕上げることが大切で、みずみずしい甘い香りを存分に楽しめるようにしてあげるのですね。 (※詳しいレシピは→こちら)
グリーンよりも甘みが強くてみずみずしく、えも言われぬ芳醇な香りがたまらない、ホワイトアスパラガス。
とても簡単な茹で方ですが、この方法で茹でるとおいしさがグッと違ってきますので、ホワイトアスパラガスを調理される際にはぜひともお試しいただければと思います。
一方、日本でもおなじみのグリーンアスパラガスはと言うと、やはりスペインや南イタリアなど、太陽を燦々(さんさん)と浴び、オリーブオイルをふんだんに使う地域では特に人気があります。
栄養面から言えば、やはり日光に当たっている分、ホワイトアスパラガスよりもグリーンの方が優れており、有名な疲れに効くアスパラギン酸に加え、豊富なたんぱく質、各種ビタミン、葉酸、カリウム、ルチン、ミネラルなどがたっぷり含まれています。
しかもホワイトほど皮をしっかりとむかなくてもよいので、調理がラク。
しかしこちらも収穫後は早めに食べるにこしたことはなく、やはりあまり長く冷蔵庫に置いておくと風味や食感が損なわれます。
ホワイトアスパラガスと同様、買って来たらすぐに水で濡らしたキッチンペーパーなどで根元を中心にくるみ、グラスやカップなどに立てて冷蔵庫の中で保存するのが良いと思います。
↑上から、ホワイトアスパラガス、グリーンアスパラガス、そしてアスパラ・ソバージュ。
他にも、全体が紫がかったヴァイオレットのアスパラガスなどもあります。こちらは品種が違っていて、香りが豊かで適度な甘みがあり、イタリアやフランスなどで特に好まれています。
また、アスパラ・ソバージュ(フランス語で「野生のアスパラガス」の意)と呼ばれる、細くて小ぶりなものもありますが、これはアスパラという名前は付いているものの別の種類で、山菜に近いような野菜です。主にスープやサラダなどに使われたり、料理の飾りにされます。
新鮮なものを見分けるコツは、いずれの色のものでも傷などがなく、穂先がしっかり閉じているもの。それが甘みがあってみずみずしく、おいしいアスパラガスの証です。
そしてホワイトの場合はさらに、できるだけ白いものを選ぶようにします。時間が経つと、これが段々黄ばんできて香りが弱くなり、苦味やえぐみが出てきますのでご注意を。
さて次回は、アスパラガスがヨーロッパでいかに愛されてきたか、そのヒミツに迫ります。
お楽しみに!
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◆参考レシピ: ホワイトアスパラガスのおいしい茹で方 (←クリックで飛べます。)
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