前回(→クリックで飛べます)、前々回(→クリックで飛べます)に続き、パルミジャーノ・レッジャーノのおはなしです。
ポー川という自然の恵み。
チーズ作りに関する豊かな知識と経験。
チーズ普及に役立つ流通ルート。
チーズ作りに欠かせない塩の確保――。
前回は最後に、パルミジャーノ・レッジャーノのふるさと、ポー川流域にそろったこれらの好条件が、その品質・味の良さと相まってこのチーズに一層大きな名声をもたらすことになったというお話をしました。
しかしもちろん、パルミジャーノ・レッジャーノというチーズが特別な理由はこれだけではありません。
そこには何より、このチーズの味と品質の良さを守ろうとするさまざまな努力があったのです。
* * *
もともとこのチーズは、いわゆるグラーナ(粒)状タイプのチーズといって、中身を触ると指でぽろぽろと砕くことができる質感を持っています。
こうしたチーズは、同じような歴史的・文化的背景を持つこのポー川流域の他の場所でも多く作られており、たとえばグラーナ・パダーノというチーズは特に有名です。
↑ ポー川流域で製造されている、一般的な「グラーナ・パダーノ」(「ポー平原のグラーナ(粒状)チーズ」の意)。見た目はパルミジャーノ・レッジャーノにそっくりだが、乳牛の飼料の品質やチーズ製造時の脂肪分・塩分量、また熟成期間がより短いなどさまざまな違いがある。
というより、もとはパルミジャーノ・レッジャーノもこのチーズの仲間でした。しかしパルミジャーノ・レッジャーノの場合、乳牛の飼育からチーズの製造・熟成 まで厳格な基準を設け、品質を管理しているため、今ではこのチーズだけは「特別なチーズ」として他から明確に区分されているのです。
(画像出典: 旭エージェンシー内 「おいしい伝統 熟成ヨーロッパ」HP、Nadia内特設サイト)
それを示すのが、パルミジャーノ・レッジャーノのパッケージに付けられたこの赤と黄色のマーク。
これは「原産地名称保護制度」(英語でPDO、イタリア語ではDOPと略記)といって、その製品の性質が、定められた産地の原材料、気候、土壌の性質、その他の地域要素に由来することを証明し、かつ同地域内で生産、加工、調整されたものでなければならないと定められていることを示すマークです。
こうして欧州連合(EU)の法律によって明確に区分されたパルミジャーノ・レッジャーノは、現在、ポー川流域 ―― 厳密には、パルマ、レッジョ・エミリア、モデナの各県全域とボローニャ県の一部、マントヴァ県の一部にあたる、約10,000平方キロメートルほどの限られた地域で生産され、チーズ作りの長年の伝統と手法を厳格に守って今日に受け継がれています。
以前のコラムで(→クリックで飛べます)、チーズはその土地その土地の自然環境や風土によって味や見た目が大きく左右される、というお話をさせていただきました。
パルミジャーノ・レッジャーノの場合もしかり。
ほんの少し地域がずれるだけでも自然環境は変わり、歴史的・文化的背景が変わり、生産方法が変わり、ついには味が変わってしまいます。
だからこそこのチーズは、上記のような地域で生産されたもののみ、その名を名乗ることが許されるのです。
↑ パルミジャーノ・レッジャーノの名前のもととなった、都市パルマ(上)とレッジョ・エミリア(下)
日本の食品がそうであるように、ヨーロッパの食品も往々にして、その地域のあり方と密接に関わっています。
本来、パルマ地方産の産物や住民一般を表す表現だった「パルミジャーノ」という言葉は、チーズの評判が上がるとともにこのチーズそのものを指すようになりました。
一方、「レッジャーノ」という言葉もまた、このチーズの主要生産地の一つであるレッジョ・エミリアから来たもの。
そこでイタリア政府は、生産者すべてがその権利を等しく保護されるよう、すでにこのチーズの生産者団体であるパルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会が提示していた「パルミジャーノ・レッジャーノ」という名前を正式な登録名称としたのです。
↑ PDO製品として認められた本物のパルミジャーノ・レッジャーノだけに入れられる焼印。「Consorzio PARMIGIONO REGGIONO(パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会)」とある。(画像出典:パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会公式HP)
するともう一つ気になってくるのが、「パルメザンチーズ」という呼び方ですね。
「パルメザン」というのは、「パルミジャーノ」の英語読みです。
ですからそのままパルミジャーノ・レッジャーノを指すこともありますが、どちらかというと私たちが住む日本がそうであるように、粉チーズの総称として使われることが多いように思います。
そうなると、もちろん、本来のパルミジャーノ・レッジャーノとはまったくの別もの。基本的にヨーロッパでは、これはパルミジャーノ・レッジャーノとは認められていません。いわば、「パルミジャーノ・レッジャーノ "風" のお手軽チーズ」という感じになります。
* * *
以上、3回にわたってお送りしてきたパルミジャーノ・レッジャーノのおはなし、いかがだったでしょうか?
忙しい現代では手軽に使える「パルメザンチーズ」も便利なものですが、しかしやはり、本物のパルミジャーノ・レッジャーノを口に含んだ時に広がる豊かな風味は何ものにも代えられない素晴らしさがあります。
豊かなポー川の自然と、工夫を重ねながらも伝統の手法を守り通す職人たち。
どんな料理にも調和しながら、忘れられないおいしさの余韻を残してくれるチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノ。
味のおいしさや品質の良さもさることながら、パルミジャーノ・レッジャーノというのはその生産地域と密接に結びつきながら発展してきた素晴らしいチーズであり、その土地の自然と人によってしか生み出されえない深い味わいを持っています。
それこそが、「チーズの王様」と呼ばれる本物のパルミジャーノ・レッジャーノの味わい。
そんな意味でもこのチーズは、まさしく「王様」にちがいないのです。
※今回の記事は、こちらのNadia内特設ページより画像を数点拝借しています。ありがとうございました。
【 関連リンク 】
〇イタリアチーズの王様 「パルミジャーノ・レッジャーノ」 (Nadia内特設ページ)
〇パルミジャーノ・レッジャーノ レシピコンテスト (Nadia内特設ページ)
〇旭エージェンシー 「おいしい伝統 熟成ヨーロッパ」キャンペーンHP
〇庭乃桃ブログ記事
・1キロのパルミジャーノ・レッジャーノをかち割ってみる! ~ 専用アーモンドナイフに隠されたヒミツ
・パルミジャーノ・レッジャーノで、素敵に手軽なワンプレートを楽しむ!
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今回も、最後にそんなパルミジャーノ・レッジャーノを使ったレシピをいくつかご紹介!
(以下、料理名にレシピをリンクしてありますので、よろしければ大きな写真と共にご覧下さい。)
まずはシンプルにこのチーズのおいしさを堪能。チーズの芳醇な香りと旨みを存分に楽しめるパルミジャーノ・レッジャーノ。栄養価に優れたこのチーズを、数種類のフルーツやナッツと共に前菜仕立ての手軽なワンプレートにしました。
◆ハーブチキンとクロカンテ(チーズチップス)のごちそうサラダ
ジューシィなチキンにたっぷりのお野菜、そこにカリカリに焼いたパルミジャーノ・レッジャーノのクロカンテ(チーズチップス)を添えたごちそう感のあるサラダ。具材それぞれの味と食感が混ざり合い、パーティーにぴったりの華やかな味わいに仕上がります。
パルミジャーノ・レッジャーノの深いコクと香りは、和食とも相性抜群! 特にお寿司は食べやすく、誰にでも好まれるおいしさです。今回はクセのある鰹を漬けにして大胆にアレンジ。どちらも素材に力強さがあるので、びっくりするほどおいしいごちそう寿司に仕上がります。
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